全労協/ 東京都 確定闘争 / 新聞 2018年12月号

全労協東京都 確定闘争  / 新聞 2018年12月号



全労協新聞
より


東京都労働組合連合会 確定闘争 
労働組合の基本的立場は、一切の競争主義反対
能力・成果主義との闘いは、これからも続く


東京都は十月三十一日、東京都労働組合連合会都労連)に対して「勤勉手当の成績率の見直し(案)」を提案した。「勤勉手当の成績率」とは、夏季・年末一時金の一部を「勤勉手当」とし、勤勉手当から一定割合の原資を拠出させた上で、勤務実績に応じて最上位、上位に位置づけられた職員(合計で約四割)に配分する制度だ。今回見直し案は、新規採用者や休職からの復帰者などに適用されていた成績率対象外の区分を廃止するものだ。

東京都側は提案理由として、国においては制度の対象外となる取扱いは行っていないことをあげているが、新規採用者は全員中位とされ、配分原資だけ巻き上げられるので結果として賃下げになる。休職明け等の職員は、評定の取扱が一般の職員とは異なる上に、勤務日数上の理由から勤勉手当を減額された上に原資を拠出させられる。これらのことは、「能力・業績の処遇への反映」云々という制度の目的からも逸脱している。国の制度がどうかは問題ではない。


格差固定化の職場環境

労働組合の基本的立場は、一切の競争主義反対にある。競わされ、処遇に格差が設けられることで職場が活性化されるという発想そのものが誤りである。競争主義は、労働者同士が協力し合って都民の期待に応えていくという気風を損ない、さらに、労働組合の団結を攻撃する性格を持つ。管理者によって下される評価は、往々にして個人的な情実に支配され、恣意的に操作される。まさに百害あって一利なし。

そのことを百も承知の上で、あえて都側が主張する「モチベーションの向上」という視点から、十月二十六日の交渉で都側が示したデータから見える職場の変質の実態を考えてみたい。なお、データは「行政系主任級以下」のものを引用する。

「直近三年間における成績率上位の取得状況」では、上位(最上位含む)三回が二一%、二回が二二%、一回が二二%、〇回が三五%となっている。「上位取得者の翌年度の成績率取得状況」は、過去三年間、連続して上位を取得した者がほぼ七二%で推移している。これらのデータから東京都は、分布に偏りがなく、多くの職員に効果が波及しており、評価も固定化しておらず、制度は職員のモチベーション向上に寄与していると自画自賛した。果たしてそうだろうか。

約四割の上位の者が翌年も上位となる確率は七割、このことから、二年目の上位者四割の内の二八%を前年の上位者が占める。中位以下となった者(約六割)からは残り枠一二%を争うことになるので、中位から上位に這い上がる確率はおよそ二割となる。

上位取得状況しかモチベーションを示す指標がないというのもお粗末だが、ご褒美を与えられた者のモチベーションが上がるのは当たり前でもある。

活性化というのであれば、使用者側から言っても、ご褒美に与れなかった者に奮起を促し、再び横一線の競争に参加することが、本来求められるのではないのか?東京都は、処遇への反映=処遇格差が職場の活性化につながると言うが、示された結果は、モチベーションにも格差が生まれ、格差が固定化されつつあるという姿だろう。モチベーションに格差が生まれ固定化される職場環境は、人間疎外そのものであり容認できない。

今次闘争では、育休明け者への対象拡大を阻止し、病休者への期末手当除算制度を廃止させたなど、一部は押し戻したが、大筋では提案通りの妥結とならざるを得なかった。いずれにせよ、能力・成果主義との闘いは終わったわけではなく、これからも続いていく。

(全水道東水労 渡邉洋委員長)