全労協/ 郵政ユニオン(労契法20条裁判) 格差是正に向け地裁判決より前進 / 新聞 2019年1月号

全労協郵政ユニオン(労契法20条裁判) 格差是正に向け地裁判決より前進 / 新聞 2019年1月号


●郵政ユニオン(労契法20条裁判)
格差是正に向け地裁判決より前進


 郵政ユニオンの三人の期間雇用社員が正社員と同一の仕事をしていながら、手当と休暇の労働条件において正社員との不合理な格差の是正を求めた労働契約法二〇条裁判の控訴審判決が十二月十三日、東京高裁で行われました。

東京高裁第二民事部・白石史子裁判長は、格差是正を求めていた労働条件のうち、原告全員の年末年始勤務手当および住居手当において正社員との格差全額を、原告一人に有給による病気休暇を付与していないことは不合理な格差として、会社に対して一六七万円の損害賠償を命じる判決を下しました。

また、損害賠償は認めなかったものの、夏期・冬期休暇ついても不合理だと認定しました。今回の高裁判決は、昨年九月十四日の東京地裁判決で不合理な格差と認定されそれぞれ年末年始手当は八割、住居手当は六割と割合適用されていたものを十割適用としたこと、同じく地裁判決では判決理由の中で不合理とされた病気休暇の損害賠償を認めたことは地裁判決を上回るものであり、大きな前進を勝ちとった判決であると言えます。とりわけ、有給の病気休暇の損害賠償は全国でたたかわれている二〇条裁判では初めてとなる判断であり、多くの非正規労働者を勇気づけるものです。

高裁判決は六月一日の長澤運輸事件、ハマキョーレックス事件の両裁判での最高裁判決に沿ったものであると言えます。一つは「賃金の総額を比較するのみではなく、当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきもの」という二〇条裁判の判断の枠組みを踏まえたこと、もう一つは正社員の「長期雇用のインセンティブ」(有為人材確保)を採用しなかったことです。

その判断に基に高裁判決では新一般職を比較対象とし、正社員全体が比較対象した会社の主張を明確に退けたこと、会社の格差を正当化する根拠の一つである内部登用制度を「その他の事情」として重視しなかったこと、年末年始という期間の限定はあるものの臨時的な労働力とは認めなかったこと、等の判断により不合理の認定と損害賠償を命じました。

高裁判決の前進は「全体の利益のため」と堂々と主張した原告団を軸に、弁護団、そして組合が一体となり、裁判闘争をたたかった結果であり、裁判所前宣伝行動をはじめとした粘り強い運動によって勝ちとられた成果です。

地裁判決で不合理と判断されなかった夏期・年末手当(賞与)は残念ながら、今回も認められませんでした。この請求は控訴審で最も重視し、具体的に正社員との金額格差を示したにもかかわらず、「労使交渉・労使自治」を理由に大きな格差を是認しました。その他の認められなかった請求項目も含めて、改めて是正を求めて上告していきます。

高裁判決日には裁判所前に約一二〇人、報告集会には約一〇〇人の組合員と支援の仲間が駆けつけてくれました。報告集会では渡邉全労協議長からも激励と連帯のあいさつをいただきました。多くのみなさんのご支援により、地裁、高裁と一つひとつの前進を積み重ねてきました。最高裁ではさらなる前進を勝ちとっていく決意です。

一月二十四日には西日本裁判の高裁判決があります。多くの傍聴支援をお願いします。

 (中村知明)