均等待遇の完全な 実現に向けて / 全労協新聞 2020年11月号
均等待遇の完全な
実現に向けて
さらなる闘いを
全国労働組合連絡協議会 議長 渡邉 洋
十月十三日・十五日、最高裁は、非正規雇用労働者への均等待遇を求めた労働契約法二〇条を巡る五件の訴訟に判決を下した。全労協加盟の契約社員組合員が原告のメトロコマースでは、高裁で不十分ながらも支払を命じた退職金の不支給を容認する不当判決となった。大阪医科大でもフルタイムアルバイトヘの賞与不支給差別について同様の判決が下された。一方、全労協加盟の郵政非正規労働者による三件の裁判は、諸手当、休暇制度で全面的に格差を不合理とする勝利判決となった。
◆退職金等で差別を容認した最高裁
それぞれの裁判で労働者側は、基本給、賞与、諸手当、退職金、休暇制度等に不合理な差別があることを明らかにしてきた。しかし経営側は、異動の範囲、業務内容や責任の程度に違いかあり相違は合理的だとした。一審、二審と闘いを重ねる中で、司法はいくつかの項目について、非正規差別の存在を「不合理」と判断した。
賞与(大阪医大)、退職金(メトロコマース)では、不合理を認めながらも支給率等の差別は程度の問題として許容された高裁判決となったが、今回の最高裁判決は「不合理とまでは言えない」と切り捨てた。基本給、賞与、退職金等の「本丸」について、勝利した郵政も含めて司法がすべて上告を棄却したことに対して強く抗議する。その一方で、郵政の最高裁判決では、手当・休暇で雇用期間の長短による差別を容認した高裁判決を、期間を限定することなく十割支給に改めさせるなどの画期的判断を引き出すこととなった。
◆労契法20条からパート・有期法へ
市場原理主義が跋扈する中、経営側は正規雇用から非正規雇用への置き換えを進めた。雇用形態が多様化されたことを受けて、労使対等の原則等と並んで「均等配盧の原則」を柱とした労働契約法が二〇〇七年に制定された。同法二〇条は、有期雇用労働者の労働条件と、期間の定めのない労働者の労働条件に不合理な相違があってはならないと定めたが、不合理か否かについては様々な解釈か可能な、極めて不十分な内容だった。
労働者側が非正規労働者の処遇改善・均等待遇、生活できる賃金の保障の実現を問いつづける中、二〇一二年に十八、十九、二〇条改定公布、二〇一三年四月に十八条(無期労働契約への転換)、二〇条(不合理な労働条件の禁止)が施行、今年四月からは二〇条がパート・有期雇用労働法に集合され、基本給、賞与を含むあらゆる待遇の不合理な格差を禁止することとなった。
◆欺瞞に満ちた「多様な働き方」
非正規雇用労働者はバブル崩壊以降拡大し、一九九五年に当時の日経連が労働力の弾力化・流動化を謳い上げて加速した。非正規雇用は、パート、アルバイト、契約等に加えて、派遺の適用範囲が拡大され、雇用関係に依らない働き方も急速に拡大した。今では非正規雇用の占める割合は四割に達し、公務公共サーピスでも非正規公務員が増加、非正規労働者の存在なくしてこの国の企業活動、公務公共サーピスはもはや成り立たなくなっている。そしてその多くが、最低賃金に張り付いた賃金水準だ。政財界は拡大する非正規雇用について、労働者のニーズに合わせた「多様な働き方」と説明してきたが、事実は安上かりな使い捨て労働力でしかない。その一方で、パソナなど中間搾取で肥え太る派遣業がはびこり、正規雇用労働者に対しては過剰な忠誠心と過酷なまでの長時聞労働か強要された。非正規拡大の流れは、働き方改革の中でも深わることはなく、今日、コロナ禍を口実にした非正規に対する解雇・雇い止めが横行している。
◆裁判の到達点踏まえ新たな闘いを
非正規という雇用形態は、企業の生き残りのために企業の都合によって作り出されてきた。雇用形態の違いによって労働者の値段に差をつけられたのだ。それ自体が、本来許されない。
今回判決によって勝ち取った成果をすべての非正規労働者に拡大適用させる職場での取り組みと実効性のある法改正を進めるとともに、取り残された差別を、新たな闘いによってひとつひとつ覆していかなければならない。非正規の七割を占める女性労働者が、今回の手当に関わる判決から取り残されないよう、手当支給に関わる女性差別撤廃の闘いも併せて進めよう。
全労協は、均等待遇実現の旗をさらに高く掲げ、志を同じくするすべての労働者、労働組合、労働団体と手を携え、闘いを進めて行く。