安倍「働き方改革」では現状が変わらない / 全労協新聞 2017年7月号

安倍「働き方改革」では現状が変わらない / 全労協新聞 2017年7月号


全労協
http://www.zenrokyo.org/

全労協新聞
http://www.zenrokyo.org/simbun/sinbun.htm
より



労働法制プロジェクト
安倍「働き方改革」では現状が変わらない

公表されない議事録
格差是正はどこに?



働き方改革実行計画をうけて四月から労政審で労働条件分科会と同一労働同一賃金部会が動き出した。長時間労働の上限を検討する労働条件分科会は、昨年末の「歴史的労使合意」(特例として、一カ月一〇〇時間未満(休日労働含む)と二~六カ月平均八〇時間(同)等)を受けて「スピード感」を持って審議すると、四月七日から五回の会議で報告書を取りまとめ、建議とした。同一労働同一賃金部会は四月二十八日から六月九日まで六回開催し報告書を取りまとめた。十六日の労政審確認を経て建議委員を行った。

二つの分科会と部会での論議を記載した議事録は一つも公開されていない。同一労動同一賃金部会など傍聴は二~三〇人の限られているのに、論議の経過が一般に公表されないまま報告書とりまとめとは乱暴に過ぎる。厚労省のHPで確認すると労働条件分科会の四月七日の議事録が六月六日に公表されているのみだ。


実効性がない特例
一〇〇時間未満


過労死ゼロを実現し、ワーク・ライフ・バランスを改善し、女性や高齢者が働きやすい社会に変えていくため長時間労働の是正は喫緊の課題というのに、過労死ラインの一〇〇時間や八〇時間の上限規制では、そこまで働かせてもいいという逆のメッセージにならないのだろうか?

また報告書では労基法に基づく指針として「特例による労働時間の延長をできる限り短くするよう努めなければならない旨規定する」というが、実効を確保できるのだろうか?

私たちが求めるインターバル規制も「労使で導入に向けた具体策の検討」というに過ぎない。

さらに過労死認定基準の後退の懸念もぬぐえない。

同一労働同一賃金では「雇用形態にかかわらない公正な評価に基づいて待遇が決定されるべき」、均等待遇規定を有期契約労働者にも適用することが望ましいとはされたが、現実に当初政権がぶち上げていた欧米並みに正規の七~八割の水準をめざすなど影も形もない。格差の合理性の立証責任は使用者に持たせず、「事業主に説明義務を課す」に留まっている。労契法二〇条裁判でも不当な判決がつづいている。これで格差是正が進むとは思えない。あらためて労組の力で突破することが求められている。