全労協/ 高プロ法廃止を! / 全労協新聞 2018年8月号



高プロ法廃止を!
労働基準法の真髄に大穴をあけた働き方「改革」法案強行成立に抗議!


六月二十九日午前、政府・与党は参議院本会議を開催し、高プロ法案の廃止、
時間外労働上限規制一〇〇時間の見直しを求めて過労死家族の会の方々が遺影を掲げる下で働き方改革法案の採決を強行し可決成立した。 

衆議院参議院の厚労委員会での審議の中で安倍首相や加藤大臣の答弁は変遷した。高プロ法案の立法事実として大臣が答えた十二人のヒアリングは一人をのぞいて法案要綱ができたあとのアリバイ作りであり、人事担当者同席で実施され、すべての労働時間規制が適用されない制度であることの説明をして聞いた内容でないことも明らかとなった。 

六月二十五日の参議院予算委員会で首相は、高プロ制度のニーズは経団連の要請にあると答えざるを得なくなった。高プロ制度は残業代を払いたくない経営側の望むものであり、一括法案から削除されるべきであった。

 高プロ法は、対象業務やその年収も省令によるとされ、一〇四日の休日と四週四日の休日さえ確保すれば後は二十四時間連続して働かせても違法ではない、健康管理時間の把握も仕方もあいまい、高プロから離脱しても過去分の労働時間の把握もできない、政省令や指針にゆだねる項目は政府答弁でも六十以上となっている等余りに杜撰なものである。政省令で決めるということは今後の改定に国会の審議は不要となる。まさに「小さく産んで大きく育てる」ことを目的としたものだ。 

国会会期の延長をしたのであれば、政省令にすべてゆだねるのではなく、対象業務や懸念される長時間労働を排除する仕組みなどを審議し明確に法律に書き込むことができたはずだ。四七項目に及ぶ付帯決議はまさに法の不備を示している。付帯決議に法的拘束力はない。

残りの七法案についても審議は不十分に終わっている。残業の上限規制についても過労死認定基準から一歩でも前進する議論こそが国会の役割のはずだ。労使の「ギリギリの合意」を盾に一歩も踏み出さない政府・与党の姿勢は許し難い。また目玉とされた「同一労働同一賃金」は、若干の非正規の処遇改善にはつながるものの、雇用管理の違いによる格差を容認し固定化するものとなった。一九四八年十二月十日に国連総会で採択された世界人権宣言は二十三条二項で「すべての人は、いかなる差別も受けることなく、同等の勤労に対し、同等の報酬を受ける権利を有する」と定めている。それから七十年も経た今日、日本の歩みは遅すぎる。このままでは長時間労働ははびこり、女性・非正規の賃金格差は残り、女性は活躍のしようもない。また、六十時間を越える残業代割増率を五十%とする規定についても、中小企業労働者への適用実施は更に二〇二三年まで先送りされた。 

七月に入ると政省令を検討する労働政策審議会が始まる。昨年四月七日から六月五日まで五回開催された労働条件分科会の働き方改革法案の審議では一つの議事録の公表もないままに建議とされた。許し難いことだ。今回『違法であったものを合法』とする高プロ法案」についてはどのように政省令が決められて行くのかを私たちは注視していく。労政審委員とりわけ公益委員の果たす役割は大きく、きちんとした責任を果たすよう求めたい。 

六月二十九日、過労死家族の会は過労死弁護団全国連絡会と記者会見を開催し、「命より大事な仕事はない」「これからも過労死の予防と救済を求めて遺族としての思いを伝えて行く」と語った。 

全労協は、地方の労働組合の協力も得た実行委員会に参加し労働法制改悪阻止全国キャラバンを展開し共に闘ってきた。また、国会内で闘う野党と連携し、雇用共同アクションに参加する組合や労働弁護団、過労死家族の会の皆さんと共に闘ってきた。今後、高プロ制度が職場に拡がることのないよう職場闘争を強め、高プロ法廃止を求めて、長時間労働廃止に向けて運動を強めていく。