●被災地からの報告(宮城全労協大内忠雄議長)
全国の皆さんのご支援と励ましに感謝します。
宮城県議会は復興計画(十年間、三四二事業)を原案通り賛成多数で可決しました。その基本は「高台移転・職住分離」など村井知事と県復興会議が進めてきた内容です。
「水産業特区」については、漁協をはじめ強い反対に加え、県政多数派の保守系会派にも慎重意見が広がったため、知事は強行突破することはできませんでした。しかし、知事は記者会見で「十三年導入」を示し、「特区を要望した宮城県が導入しないことはありえない」と述べ、政治的事情を持ち出すありさまです。
県復興計画には「復旧にとどまらない抜本的な再構築」と記されています。「日本の成長戦略のための被災地復興」という経団連などの主張もまかりとおっています。そのような「復興議論」の根本を批判し、社会的に問い直していく闘いが求められています。
被災地では住まい、医療と福祉、雇用、交通、教育など、生活の基本が立ち直っていません。そのため、住民の苦悩が深まり、意見の対立や地元流出も起きています。国の責任に加え、「トップダウン方式」が事態を悪化させています。
たとえば、県の民間賃貸住宅の借り上げによる入居決定は二万件(県による仮設住宅と同数)を超えていますが、県の事務処理が追いつかないため、契約は五千件にとどまり、そのうち家賃支払い手続きを終えたのは一千件余にとどまる(八月末現在)など、県のずさんな対応が明らかになりました。
また、沿岸部の被災地は建設制限がかかったままです。各自治体は国の方針不在を理由にしていますが、住宅を再建できるのか、商店や工場の再開できるのか、住民たちは方針の立てようがない日々を送っています。
高台移転についても被災地は一様ではありません。三陸海岸では、作業場(海)が見える高台(裏山地域)への集団移転と、内陸部への移転ではまったく話が違います。仙台平野では移転に適した「高台」はありません。内陸部への集団移転方針を出している仙台市は、移転先の土地を購入して新築した場合、自己負担は三千万円のケースも出てくると試算しており、住民の不安が高まっています。
「自立へのスタート」とされた仮設住宅では、当初から孤立と生活困難が大問題となりました。入居者たちは「ふれあい」「励ましあい」の試行錯誤を重ねてきましたが、行政対応が遅れる中、自殺や孤独死の危機が深まり、現実となりました。石巻市では震災後七か月で避難所が閉鎖されましたが、様々な事情で行く先のない被災者たちは一時的な「待機所」で冬を迎えようとしています。
被災沿岸部の復旧は進んでいません。私たちは東北全労協とともに「視察ボランティア」を全国の皆さんに呼びかけ、実施してきました。放置されたままの被災地を見るにつけ、企業進出のために民衆を排除しようとする構図が浮かび上がってきます。「白紙状態に便乗」した「第二の津波」(東京新聞社説)のように被災地を襲う「特区」の意図的なたくらみがそこにあります。宮城全労協はそのような動きに反対・対抗し、被災民衆とともに「復旧・復興」を実現していく決意です。
また宮城県は放射能汚染対策に消極的でしたが、稲わら問題では畜産業者から県への批判が巻き起こりました。最近では、福島県境の丸森町など、健康診断を国に要請していないことも問題になりました。このような県の姿勢をただすとともに、女川原発の再稼働をねらう東北電力と村井知事への抗議を強めていく所存です。
(F)