国は訪問介護労働者の誇りと生活を保障せよ / 全労協新聞 2021年3月号   

国は訪問介護労働者の誇りと生活を保障せよ 全労協新聞 2021年3月号 

 


Woman直言



国は訪問介護労働者の
誇りと生活を保障せよ

ホームヘルパ一国家賠償訴訟原告
全国一般ふくしま連帯ユニオン

佐藤 昌子


 福島で訪問ヘルパーとなり六年目です。「介護の社会化」を掲げ、「介護保険制度」が施行され二十年。
介護保険は、介護労働者、介護を要する人、家族、事業者、納税者、どの立場からも破綻に繋かる多くの問題を内包しています。

 ヘルパーの八割が、非正規登録型の出来高払い・シフト制で、シフトに組まれなければ収入は無く、拘束時間が長いのに低収入です。基礎賃金も保証されず、月毎に賃金が変わるため、生活か安定しません。
 劣悪な労働条件の要因は、六回の内五回のマイナス報酬改定と、事業所への報酬が、介護時間のみを算定対象とする介護保険の仕組みにあります。

 労基法では、訪問介護の「移動・待機キャンセル」を労働と認めていますが、まともに支払えば事業所は維持できなくなります。労基法が守られないのは「給付金・直接契約方式」を取る介護保険に問題があり、国の責任です。「労基法違反の実態を知りながら、介護保険をそのままにしてきたことが違法であり『規制権限の不行使』にあたる」として、ヘルパー三人が、労働実態に見合った賃金の補償を国に求め、二〇一九年十一月に提訴しました。

 昨年、原告らは裁判の証拠とするため、ヘルパーに労働実態のアンケートを実施、六八二人から回答が得られ、労働時間は様々ですが、平均月収が「非正規・登録型」五・五~七・八万円、「正社員」十五・六~一七・一万円との結果でした。ヘルパーは高齢者か多く、シンクルマザーもいます。年金やWワークで生計を立てています。また、仕事をする理由では「生活の為」「利用者の為」が多く、利用者を見捨てられず、辞めたくても辞められない、複雑な思いが伝わってきました。

 効率化で、生活援助が九十分から六十分に短縮され、二〇一五年改定では、四五分と二〇分と分刻みの労働も出てきました。介護は計画通りには行きません。利用者を急き立て、てきぱきと動き回る行為は「暴力」にもなります。効率化で、サーピス残業が常態化しています。

 コロナ禍の二〇二〇年六月、国は「地域共生社会の実現の為の社会福祉法の一部改正」を行い、二〇二一年四月に施行されます。社会福祉の責任主体を地域住民とし「助け合い」を義務化して、介護を「誰にでもできる仕事」と位置付け、地域住民を無資格ポランティアとして組織化するのが狙いです。介護事業所の倒産は、ヘルパー不足による訪問介護事業所が半数を越えます。ヘルパーは、地域社会を支え、先見性を持ち、人が人として生きることを支える「専門職」です。
昨年、ヘルパーの求人倍率は十五・七倍に。平均年齢が五七歳、ヘルパーを次世代に繋ぐギリギリの時と捉え裁判に臨んでいます。ヘルパーが、やりがいと誇りある労働になるようにお力をお貸しください。宜しくお願いいたします。

 最後に「森発言」の女性蔑視が波紋を呼んでいます。ヘルパー労働は、ジェンダー差別と偏見で作られた労働です。家庭や社会で日々積み重ねられる「性差」か、男女問わずあらゆる「質を問わない雇用」の根底にあります。誰もが「内なる差別」と真摯に向き合い、行動することが求められています。労働組合こそが変革の原動力となることを期待します。