全労協/ 成果を活かす新たな労契法20条の取り組み / 新聞 2019年11月号

全労協成果を活かす新たな労契法20条の取り組み / 新聞 2019年11月号

 

 

郵政産業労働者ユニオン

成果を活かす新たな労契法20条の取り組み

 

 郵政ユニオン中央本部は日本郵便とゆうちょ銀行二社に対し、「労働契約法二〇条に基づき、手当等の支払いを求める要求書」を八月二十日、提出しました。この要求は、郵政労契法二〇条裁判における東京高裁判決(二〇一八年十二月十三日)及び大阪高裁判決(二〇一九年一月二十四日)で労契法二〇条に違反し、不法行為と認定された手当と休暇の損害賠償の効力が東西十一人の原告にしか及ばないことから、原告らと同様に働く非正規労働者にも損害賠償金の支払いを求めたものです。

 この要求書の最も大きな特徴は郵政ユニオンに加入する非正規組合員、188人(日本郵便一八七人、ゆうちょ銀行一人)の組合員一人ひとりに住居手当、年末年始勤務手当、扶養手当、夏期・冬期休暇及び病気休暇の賃金相当額、祝日割増賃金、賞与の正社員との差額分の支払いを求めている点です。さらに三年という損害賠價請求の請求期限にこだわらずに二〇一三年四月からの支払いと地裁、高裁で負けた扶養手当と賞与についても不合理な格差として要求しました。九月十九日、要求書の主旨説明の交渉を行いました。

 今回、要求書の提出と合わせて、二社に対し、差額と損害の支払いを求める催告書を内容証明で郵送しました。催告書は「裁判上の請求」を前提に損害賠價請求の消滅時効を停止させ、組合要求に全くの前進がない場合は、六ヵ月以内に新たな二〇条裁判を組織の総力を結集してとりくむことにしています。全国各地で集団訴訟が行われることを想定しています。

 郵政二〇条裁判は東西とも現在、最高裁で争われています。原告、被告双方上告受理理由申立書を提出し、原告側はこの夏に「相手方への反論書」を提出してきました。東西弁護団は東西代理人を双方の裁判の代理人に選任していくことを決め、弁論開始対策も含め、最高裁での勝利に向けての体制を強化しました。

 東日本裁判では高裁判決以降の原告三人の請求期間を拡張し、さらなる損害賠償を求める訴えを九月十九日、東京地裁に提訴しました。

 労働契約法二〇条は有期を対象した法であり、郵政では無期転換した「アソシエイト社員」は対象外となります。労働契約法十八条を前倒しし、二〇一六年十月から制度がスタートし、二〇一七年四月には約八万人弱の無期転換社員が誕生しました。二〇条を根拠とした裁判では損害賠償も無期には適用されないことになります。労働条件がほぼ全く同じにもかかわらず…。しかし、七月八日の井関農機二〇条裁判において無期転換社員にも損害賠慣を認める高松高裁判決が出されました。これをひとつの突破口に郵政でも無期転換のたたかいにチャレンジしていくことも視野に入れています。

 郵政ユニオンは今、二〇条裁判のたたかいの成果を活かす取り組みを開始しました。組織の力量、財政からも困難なたたかいとなることは承知しつつ、新たな権利闘争としてたたかい抜く決意です。多くのみなさんのこ支援をお願いします。

(中村知明)