全労協 申し入れ書 あらゆるハラスメントの根絶に向け

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厚生労働大臣
 加藤 勝信 殿

        2019年12月10日
        全国労働組合連絡協議会
        議長 渡邉 洋

申し入れ書

 

あらゆるハラスメントの根絶に向け、パブコメに寄せられた意見を踏まえた指針案の策定及び、ILO条約の批准、同条約に基づく法整備を求める要請

 

 11月20日労働政策審議会は所謂ハラスメント防止関連法に基づく指針案を決定してパブリックコメントに付すことを決定した。

 今年6月、「職場における優越的な関係を背景としたハラスメントに関して雇用管理上講ずべき処置」関連法を成立させ、職場に蔓延する様々なハラスメントについて防止する措置を企業に設けることとした。

 しかし、国会審議においても、この法律の決定的な問題点として禁止事項がなく、また、ハラスメントの定義が狭く、実効性に乏しいなどの指摘が行われ、衆参両院において、全会一致で付帯決議が採択された。また、6月にはILO総会は、仕事の場におけるあらゆるハラスメントを禁止する条約を92%の賛成で採決した。日本政府は同条約の採択について賛成を表明している。

 ところが、この度労政審雇用環境・均等分科会から提示されている「ハラスメント指針案」では、ハラスメントを防止するという目的から大きく逆行し、企業に言い訳を指南し、かえって容認、拡大することにもなりかねず、多くの問題点を含むものとなっている。到底容認できないものである。また実際に問題が起こっている就活生やフリーランスで働く労働者などへのハラスメント防止が全く不十分である。さらに指針案ではハラスメント例を挙げながらも、あえてハラスメントにあたらないという例を列挙している。

 一例を挙げればハラスメントに該当しない例として「懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。」などを挙げている。JR福知山線事故の際に問題となったように、少しのミスを犯した運転手へ、日勤教育と称して別室にて、叱責と反省の強要を繰り返し、運転手をして恐怖心から大事故を引き起こしたのである。この事故では乗客の多くが犠牲となり、当該労働者も犠牲となった。また郵政の職場においても、ノルマ未達の労働者に対しいわゆる「お立ち台」上で職員の前で反省を強要し、結果として自死を招いたこともある。今年明らかになった郵政グループの保険勧誘において高齢者をだました事例なども労働者へのハラスメントの結果である。

 全労協は仕事の場におけるあらゆるハラスメントは長時間労働の一因となり、過労死、過労自死の大きな要因であること、全てのハラスメント禁止こそ喫緊の課題であると考える。
 
 現在行われているパブリックコメントの募集を形式に終わらせず、寄せられた全ての意見を分科会委員に周知し慎重審議を要請する。あわせて、ILOハラスメント条約の批准に向けた法整備に着手するよう強く要請する。

以上

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