郵政労契法20条裁判東日本裁判高裁判決 2018年12月13日



郵政労契法20条裁判東日本裁判高裁判決 2018年12月13日
地裁判決より前進勝ちとる!!
日本郵便に167万円の支払を命じる

←ビラ・声明はこちらをクリックしてください

 全員勝訴の地裁判決から1年3ヵ月、郵政ユニオン組合員の期間雇用社員3名が原告となりたたかっている「郵政労契法20条東日本裁判」で東京高等裁判所第2民事部(白石史子裁判長)は12月13日、3名全員の請求を認容し、日本郵便に対し地裁判決を上回る損害賠償を命じる判決を下した。郵政ユニオンは正社員も非正規社員も積極的に組織化し、労働条件の格差是正を会社に求めてきた。今回の判決は、正社員、非正規社員が、ともに一致団結してたたかってきた運動の大きな成果である。




日本郵便株式会社・労契法20条格差是正訴訟
2018年12月13日高裁判決にあたっての声明 

2018年12月13日 
労契法 20 条格差是正訴訟原告弁護団 


本日、東京高等裁判所第2民事部(白石史子裁判長)は、期間雇用(非正規)社員である原告3名が不合理な労働条件の是正を求めて日本郵便株式会社を提訴した事件の控訴審において、年末年始勤務手当および住居手当を期間雇用社員には支給していないこと、そして有給の病気休暇について、原告一人に付与していないことは不合理な格差であるとして、会社に原告らに対する損害賠償を命じる内容の判決を行った。 

原判決は、原告らが格差是正を求めていた労働条件のうち、①年末年始勤務手当について正社員の支給額の8割、②住居手当について同じく6割を損害と判断し、他に判決の理由の中で、③夏期冬期休暇と、④有給の病気休暇を取得させないことは不合理な労働条件の相違であるとしたが、年末年始勤務手当と住居手当をそれぞれ8割と6割とし、夏期年末手当(賞与)等その他の手当の格差について不合理と認めなかった点で、問題の残る判決となった。 

控訴審において原告らは、 原判決が不合理と判 断しなかった夏期年末手当(賞 与)について、原告らと比較対象とすべき正社員の夏期年末手当(賞与)の金額を 実際に示したうえで、最小でも5.1倍、最大で16.78倍もの開きがあることを主張し、夏期年末手当(賞与)が過去の功績を考慮要素とする手当であるにもかかわらず、あまりにも大きな格差が生じていることを立証した。また、時給制契約社員である原告らには、有給の病気休暇が与えられていないため、病気にかかった場合にも生活を考えて休むことを躊躇し、無理をしてでも出勤するか、年休を使って欠勤を最大限に抑える努力をするなど、原告らが 体調回復に専念すべき状況であっても、常に失業への不安を抱え、多 大な苦痛を強いられてきたことについて、改めて主張を行った。さらに、原告ら期間雇用社員 は、最繁忙期である年末年始や過酷な勤務となる真夏の時期 にも正社員と同様にシフトに組み込まれ ているにもかかわらず、正社員には付与されている夏期冬期休暇 も付与されず、家族と過ごす時間等の休息や慰労の機会を著しく制 限されてきたことによる損害についても、厚く主張を補充した。 

これに対し、被告日本郵便は、原判決で新人事制度以降の原告らとの比較対象とされた新一般職においても「長期雇用のインセンティブ」を付与する 必要があるため、様々な種類の手当や休暇などの労働条件についての相違は、不合理ではなく、原判決 で不合理であるとされた住居手当及び年末年始勤務手当についての判断 は、取り消されるべきであると主張した。また、有給の病気休暇及び夏期冬期休暇についても、期間雇用(非正規)社員が臨時的労働力であることを強調し、これらの相違も不合理でない旨主張した。 

本日の判決は、原告らが格差是正を求めていた労働条件のうち、年末年始勤務手当及び住居手当の正社員との格差全額の損害賠償及び有給の病気休暇を付与し ていないことによる損害賠償を認め、原判決を前進させた。 

2017年9月14日に原判決があって以降、労働契約法20条に基づく判決が複数出されたが、有給の病気休暇の格差に損害賠償を認めた判決は、本判決が初である。本判決は、非正規労働者の労働条件格差を是正していくための前進といえる 判決である。 

被告の日本郵便株式会社は、約20万人の正社員に対してほぼ同数の約19万人の期間雇用社員が働く大企業である。民間の大企業で働く非正規労働者の格差を是正する本判決が出たことは、非正規雇用の増大と格差が広がるわが国の 雇用社会に与える 影響力が大きいものといえる。

郵政産業労働者ユニオンは正社員だけではなく、原告らのような非正規労働者も積極的に組織化し、労働条件の格差是正を被告会社に求めてきた。本日の判決は、正社員も非正規 社員もともに一致団結して闘ってきた労働組合運動の大きな成果である。 

もっとも、本判決は、夏期年末手当(賞与)について、不合理な格差であることを認めず、未だ非正規社員と正社員との大きな格差を是認するものである等、不十分な点を残している。この点について、原告らは改めて格差是正を求めて、 上告する。 

被告会社は本判決を真摯に受け入れ、非正規社員と正社員との労働条件の格差を是正するために、直ちに労働組合との団体交渉の席に着いて 労使交渉を始めることを強く求める。 

以上