安倍政権の働き方改革と闘う / 全労協新聞 2018年2月号

安倍政権の働き方改革と闘う / 全労協新聞 2018年2月号


安倍政権の働き方改革と闘う
労働現場の喫緊の課題は、長時間労働の是正と非正規労働者格差是正


安倍政権は、今国会は「働き方改革」国会だと言っています。でも、それは誰のためでしょうか?
「世界で一番企業が活動しやすい国に」という首相の方針から労働者のためでないことは明らかです。

今国会に上程される法案は、昨年9月の「国難解散」で未だに示されていません。昨年、労働政策審議会の各部会が議事録も公開しないまま慌ててまとめた建議を受けて8つの法案が一括にした法案要綱があるだけです。

労働現場の喫緊の課題は、長時間労働の是正、非正規労働者格差是正です。

しかし、法案要綱に示された時間外労働の上限規制は、月45時間、年間360時間を罰則付き上限とするとしながら労使協定を結べは、月100時間の残業、休日労働も入れれば年間960時間の残業も可能とするものです。

これでは過労死容認ルールです。労基法でこんな基準が認められたら、長時間労働が当たり前になりかねません。

その上、年間休日104日と有給休暇5日を与え、健康診断をすれば1日24時間を労働200日以上連続することも可能な「高度プロフェッショナル制度」や、どんなに働いてもあらかじめ決めた時間を働いたと見なす裁量労働制を拡大しようとしています。長時間労働削減に全く逆行するものです。こんな働き方が当たり前になったら、人らしく生きることも、子どもを育てることも、介護をすることもできません。

労働基準法は1日8時間労働を定め、時間外労働は労使協定がなければできない例外なのです。

この国から非正規労働者という言葉をなくすとぶち上げた「同一労働同一賃金」の実現も怪しくなりました。法案要綱では、有期契約労働者を現行のパート法の対象にし、パート法8条・9条の適用で均衡・均等処遇を実現するとしています。非正規で働く人の7割は女性です。その女性が多く働くパート労働で正規労働者と待遇が同じになった例など聞いたことがありません。これでは非正規の賃金格差を「欧米並みの8割に」などの政府のスローガンは実現するはずがありません。

おまけに職務が同じかどうかの判断基準すら明らかではありません。労働契約法20条を基に裁判が行われて、「雇用管理」という身分が違うなら、差別は当然と言わんばかりの判決がでています。こんな状況で労働契約法20条の削除などもっての他です。

4月から労働契約法18条による有期労働者の無期転換権が有効となりますが、今、権利行使させないための雇止めが増えています。経営者には、法を守る意思がないのです。さらに政府は労基法の適用をうけない「雇用されない働き方」を増やそうと検討しています。

貧困による格差が拡大し、各地でこども食堂などの取り組みが行われています。それを行政が支援する動きもでています。でもこれでは根本的な解決にはなりません。今必要なのは8時間働いたら生活できる賃金です。その1歩が、今すぐ最低賃金を全国一律1000円にし、早急に1500円を実現すべきです。

昨年秋に公表されたジェンダー平等度で日本はまた順位を下げ、144ヶ国中114位となりました。その原因は経済分野と政治分野における男女格差です。

2007年のジェンダー平等度は、日本の80位、フランスは76位でした。それが10年後には114位に下がり、フランスは11位と順位を上げているのです。これは政治姿勢の問題です。人口減少が始まった今、政治が取り組むべきは、女も男も仕事・家事・育児・介護もできる真の「働き方改革」であり、改憲論議ではありません。

柚木康子 常任幹事