残業上限政労使合意は過労死の合法化だ / 全労協新聞 2017年4月号

残業上限政労使合意は過労死の合法化だ / 全労協新聞 2017年4月号


全労協
http://www.zenrokyo.org/

全労協新聞
http://www.zenrokyo.org/simbun/sinbun.htm
より



直言
激論


残業上限政労使合意は過労死の合法化だ



三月十三日に連合と経団連が合意した時間外労働の一カ月の上限規制「一〇〇時間基準」を「未満」としたと安倍首相は手柄のようにいう。どんでもない!「一〇〇時間」という数字が法的根拠を得たら、企業に過労死の責任を追及できるだろうか!今の司法の状況では疑問だ。労災認定基準も揺らぎかねない。一〇〇時間未満の残業で過労死・過労自死したら、個人の責任にされかねない。

三月十五日午後、労働弁護団主催の「過労死ラインの上限規制を許すな!」の緊急集会が開かれ、会場の参議院議員会館講堂はほぼいっぱい。棗労働弁護団幹事長は、労使合意は厚労省が定めた「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」であり、政府が過労死を容認するもの、労基法改正にあたっては企業責任を問えないような事態になることの無いように明記すべきと語った。川人過労死弁護団幹事長は、補償はするが差し止はしないというもの、補償をすれば命が戻るのか、長時間労働は経営にとってもマイナスだと強調した。

議員は民進党から井坂議員、長妻議員をはじめ六人、共産党は田村議員ほか二人の九人が参加し発言した。元厚労相の長妻氏は先進国として恥ずかしいメッセージを送ってしまった、国会はあるべき姿を追及すると。田村氏は予算委員会厚労省は七二〇時間の根拠も答えられなかった、大臣告示の月四五時間年三六〇時間を闇に葬ってはならないと。

過労死家族の会から京都・兵庫・東京・宮崎・和歌山の会から夫や子供を亡くした悲しみと特例を認めることはできないとの強い思いが語られた。家族の会代表の寺西さんは、電通の高橋まつりさんの遺族からのメッセージを紹介し、なぜ大切な家族を失った遺族が働き方改革会議のメンバーにならないのか、今出されているのは「過労死防止対策推進法」に真逆なもの、働き方改革でこの案が出ることを阻止したい、過労死は企業殺人、人災ですと訴えた。

労働団体からも発言があり、全労協は中岡事務局長が大企業の特例時間が一向に減らない状況で合法化されたら企業による殺人だ、形ばかりの労政審を認めるわけにはいかない、職場の三六協定の点検も含めて闘うと決意表明した。連合は全国ユニオン鈴木委員長、全労連は伊藤常任幹事が発言した。

繁忙期などという理由で人の命が奪われて良いわけはない。真に実効ある上限規制と勤務間インターバルが必要だ。ところが三月十八日、一日一〇〇時間、二~六カ月平均八〇時間には休日労働を含むが、年間七二〇時間には休日労働は含まないと報道された。その結果月平均八〇時間、年間九六〇時間の時間外労働が可能になる。まさに過労死促進ルールではないか!今後の労政審、国会に向けた運動を強めよう。

(柚木康子常任幹事)