われわれの17春闘を闘い抜こう / 全労協新聞 2017年4月号

われわれの17春闘を闘い抜こう / 全労協新聞 2017年4月号


全労協
http://www.zenrokyo.org/

全労協新聞
http://www.zenrokyo.org/simbun/sinbun.htm
より


われわれの17春闘を闘い抜こう
労働者の賃上げなしに「経済の好循環」は実現しない
生活できる賃金をよこせ



これで過労死が
防げるのか


本当にこれで過労死が防げるのか。

「時間外労働の上限規制等に関する労使合意」文書について、経団連会長は月一〇〇時間「以下」、連合神津会長は月一〇〇時間「未満」と表記するよう主張していた。安倍首相は首相官邸経団連と連合のトップを呼んで、月一〇〇時間未満で最終合意するよう求めた。そして政府が進める残業時間の上限規制について、経団連と連合のトップは、「月最大一〇〇時間」に合意をした。これを安倍首相等は「極めて画期的で、歴史的な大改革だ」と胸をはった。

今回の「労使合意」文書によると、「時間外労働の上限規制は、月四五時間、年三六〇時間とする。ただし、一時的な業務量の増加がやむを得ない特定の場合の上限については、
①年間の時間外労働は月平均六〇時間(年七二〇時間)以内とする。
休日労働を含んで、二カ月ないし六カ月平均は八〇時間以内とする。
休日労働を含んで、単月は一〇〇時間を基準値とする。
④月四五時間を超える時間外労働は年半分を超えないこととする。
以上を労働基準法に明記し、これらの上限規制は、罰則付きで実効性を担保する」としている。

ただ、原則の「月四五時間」や「年七二〇時間」には休日労働を含まないため、特例が定める月八〇時間までは休日労働の分を上乗せできることが明らかになっている。

また、法律に努力義務規定となった、「勤務間インターバル制度」は、残業時間の上限規制と合わせ長時間労働を防ぐものだが、休みも取れず、長時間の残業を続ければ、疲労が蓄積し、過労死のリスクは高まる。にもかかわらず、終業から次の始業まで一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル制度」については、法律への導入については努力義務とした。


過労死ラインまで
働かせる労使合意


過労死をなくそうと二〇一四年に「過労死等防止対策推進法」が施行され、過労死対策への国の責任が盛り込まれた。今回のこの「労使合意」は、違反企業に対する罰則規定があるものの、過労死や過労自死等の労働災害を招く長時間労働に政府自らお墨付きを与えるものではないか。労使協定を結べば、繁忙期など半年に限り特例で月最大一〇〇時間未満、二~六カ月の月平均で八〇時間以内で残業をさせることが法律で認められることになる。これらの上限時間は、厚労大臣告示の月四五時間を無視し、「長時間労働の是正」に逆行する。そして、厚生労働省が定める過労死の認定基準とも重なる。残業を強いられる労働者からすれば、「一〇〇時間未満」も「一〇〇時間以下」も、低レベルの攻防に過ぎず、過労死ラインまで働かせられることに変わりはない。いくら罰則付きがあろうと残業の上限規制を拡大しては、労働者は働き続けることはできない。

今回の「労使合意」の条件として「五年後の見直し」規定を設けているが、経団連は「実態に即した見直しは検討する」との立場だ。今、上限規制ができなくて五年後に見直しなどできるとは思えない。実際のところ経団連会長は、「過労死の労災認定基準に抵触する月一〇〇時間超の残業を『認めるべきではない』」としながらも、「実態を離れた急激な規制は企業の国際競争力を弱める」などと、月一〇〇時間の残業容認を迫っている。

企業は総額人経費の削減から人員採用をしない。慢性的な人員不足が続いていて、少人数で倍の仕事をさせる。当然、休みは取れない。労働時間の是正は人を雇い入れるしかない。

安倍首相は、「今年(二〇一六年)並みの水準を確保」と「四年連続のベア実施」を経営側にお願いした。しかし家族手当や一時金など、年収ベースに押さえつけられ、春闘の相場づくりをする電機、自動車が二年連続で前年割れをした。

経営側の利益は伸び続けている。消費の六〇%は個人消費、労働者の賃上げなしに「経済の好循環」など実現しない。「生活のできる賃金をよこせ!」で、われわれの春闘を闘い抜こう。