2014/08/12 京都労働局 交渉 労災 「適正給付管理対策業務要綱」について

2014/08/12 京都労働局 交渉 労災 「適正給付管理対策業務要綱」について

ユニオンネットワーク・京都で交渉を行った。


イメージ 1


ア) 問題 ~労働局の「お知らせ」が被災労働者を追い詰める~
イ) 問題になった要綱(一般傷病
ウ) 要綱(振動障害)の場合 ~こちらの方が丁寧になっている~
エ) 京都労働局の対応(概要) ユニオンネットワーク・京都の追及
オ) 参考サイト



ア) 問題 ~労働局の「お知らせ」が被災労働者を追い詰める~

発端は、きょうとユニオンのケース。

うつ病の労災認定を受け療養中であった被災労働者に、症状固定と給付打ち切りの事前通知の「お知らせ」が届いた。この「お知らせ」で、被災労働者は休業補償を請求できないものと錯誤し、請求をあきらめた。

同様の「お知らせ」文書が事業主側にも送られた。
事業主は、労災の「治癒」を、「完治」と勘違いし、職場復帰を強要。
被災労働者の心身の状態はさらに悪化。


「症状固定(治ゆ)の判断を行った場合には、主治医及び症状調査対象者に対し、その結論に達した判断理由等も含めて十分な説明を行い、形式的な通知や画一的な対応に止まることのないよう留意すること。」
というようなことは全く行われなかった。





「治ったとき」とは

 労災保険における傷病が「治ったとき」とは、 身体の諸器官・組織が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療(注1)を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態(注2)をいい、 この状態を労災保険では「治ゆ」 (症状固定) といいます。
 
 したがって、「傷病の症状が、投薬・理学療法等の治療により一時的な回復がみられるにすぎない場合」など症状が残存している場合であっても、 医療効果が期待できないと判断される場合には、労災保険では「治ゆ」(症状固定) として、療養 (補償) 給付を支給しないこととなっています。


注1 「医学上一般に認められた医療」とは、労災保険の療養の範囲 (基本的には、健康保険に準拠しています) として認められたものをいいます。したがって、実験段階または研究的過程にあるような治療方法は、ここにいう医療には含まれません。
 
注2 「医療効果が期待できなくなった状態」とは、その傷病の症状の回復・改善が期待できなくなった状態をいいます。

▲分かりにくいですが、
『治癒(ちゆ)とは一般的には身体に負った傷や病気などが完全に治ることを指しますが、労災保険でいう治ゆは完全に治ることを指してはいません。』
の説明が分かりやすい。



イ) 問題になった要綱(一般傷病

京労基発0320第2号
平成26年3月20日


京都労働局労働基準部長

「適正給付管理対策業務要綱」の策定について

 当局の適正給付管理対策業務について、斉一性のある業務を進めるため、別添のとおり「適正給付管理対策業務要綱」を策定したので、平成26年4月から本要綱に基づき適切な業務の推進を図られたい。


適正給付管理対策業務要綱
(一般傷病・振動障害)

平成26年4月

京都労働局

適正給付管理対策業務要綱
(一般傷病)

7 治ゆ認定の手続き
 前記6の調査により、治ゆと認められている者については、本人及び所属事業場(退職者は除く。)並びに主治医に対して、治ゆ認定した日の概ね1か月前までに、「お知らせ」により通知すること。
 また、診療費等の過誤払いを生じさせないよう「治ゆ年月日」の登記を徹底すること。

8 治ゆ認定の取扱い
 治ゆ認定を行ったことに対して、理解が得られない場合、前記7の「お知らせ」は、行政処分ではないため、治ゆ後の日に係る療養(補償)給付又は休業(補償)給付請求書を提出するよう説明し、請求書に基づき、症状改善の見込みや治療効果等について本人聴取や医学的な調査を行ったうえで、治療継続の必要性が認められない場合、不支給決定を行うこと。

[関連本省通達]
・「適正給付管理の実施について」
 (昭和59年8月3日付け 基発第391号 労働省労働基準局長)
・「適正給付管理の実施に係る事務処理上の留意点について」
 (昭和58年8月3日付け 事務連絡第25号 労働省労働基準局補償課長)

▲京都労働局は、「留意点について」の日付は間違い。
基発に合わせてだされている留意事項なので、「昭和58年」となっているが、正しくは「昭和59年」。

▼「要綱」の根拠になっている「事務連絡」

「適正給付管理の実施に係る事務処理上の留意点について」
 (昭和59年8月3日付け 事務連絡第25号 労働省労働基準局補償課長)
ホ.  上記ロ、ハ及びニにより調査等を行った調査対象者については、その調査結果から判断して
① 症状固定と認められる者
② 療養を継続しながら就労が可能と認められる者
③ 療養に専念することが必要と認められる者
に区分し、その旨管理力一ドに記載したうえで次の措置等所要の措置を講ずるとともに、当該調査対象者から保険給付の請求があった場合には、これに基づいて行政処分を行う。
 
(イ) 上記①に該当するものについては、医療機関、調査対象者本人等について症状固定と認められ、その後の給付はできない旨の通知をする。

▲「事務連絡」は、「医療機関、調査対象者本人等」となっていて、「所属事業場」は入っていない。
なので、京都労働局が、独自に(勝手に)付け加えていた。



ウ) 要綱(振動障害)の場合 ~こちらの方が丁寧になっている~

適正給付管理対策業務要綱振動障害

13 主治医及び症状調査対象者に対する文書による通知及び説明
(1)調査後、次の場合は主治医に通知を行うこと。
  ア 症状固定(治ゆ)と判断したとき。
  イ 経過観察を実施するとき。
  ウ 経過観察中又は終了時に、療養継続としたとき。
(2)調査後、次の場合には調査対象者に通知を行うこと。
  ア 症状固定(治ゆ)と判断したとき。
  イ 経過観察を実施するとき。
  ウ 経過観察中又は終了時に、療養継続としたとき。
(3)上記(1)の通知を行うに際して、原則として、主治医及び調査対象者に対してその内容を説明すること。
 症状固定(治ゆ)の判断を行った場合には、形式的な通知に止まることのないよう判断理由も含めて十分な説明を行うこと。
(4)主治医及び症状調査対象者に対し、症状固定(治ゆ)の通知をする場合には、症状固定(治ゆ)とする日の概ね1か月前までとすること。

14 症状固定(治ゆ)認定の取扱い
 症状固定(治ゆ)認定の理解が得られない場合、前記13の通知は、行政処分ではないため、治ゆ後の日に係る療養(補償)給付又は休業(補償)給付請求書を提出するよう説明し、請求書に基づき、本人面談(聴取)や、症状改善の見込みや治療効果等についての医学的な調査を行ったうえで、治療継続の必要性が認められない場合、不支給決定を行うこと。

▲京都労働局「要綱」▼元となる「事務連絡」

振動障害に係る適正給付管理対策の運用について 
平成8年1月25日 事務連絡第1号】 

12 主治医及び症状調査対象者に対する文書による通知及び事前説明
(1)  監督署長は、調査後次の場合には主治医に通知すること。
  イ 症状固定(治ゆ)と判断したとき
  ロ 療養継続と判断したとき
  ハ 経過観察を実施するとき 
(2)  監督署長は、調査後次の場合には症状調査対象者に通知すること。
  イ 症状固定(治ゆ)と判断したとき
  ロ 経過観察を実施するとき 
(3)  監督署長は、上記(1)及び(2)に係る通知を発出する前に、主治医及び症状調査対象者に対しその内容を説明すること。
  特に、監督署長が症状固定(治ゆ)の判断を行った場合には、主治医及び症状調査対象者に対し、その結論に達した判断理由等も含めて十分な説明を行い、形式的な通知や画一的な対応に止まることのないよう留意すること。
  また、最終的な判断は監督署長が行うものであることから、仮にも「局医協議会の判断(決定)である」といった誤った説明を行うことのないよう配意すること。
  その際、労災保険制度における症状固定(治ゆ)の概念、障害補償給付、アフターケア、社会復帰援護制度等について十分説明を行うこと。 


▲「適正給付管理の実施に係る事務処理上の留意点について」 (昭和59年8月3日付け 事務連絡第25号 労働省労働基準局補償課長)の
不十分な点は、
振動障害に係る適正給付管理対策の運用について」(平成8年1月25日 事務連絡第1号)を元に
書き換えたら良いのではないかと思う。

そうした厚生労働省の文書の変更が、京都労働局の「要綱」の書き換えにつながるし、ひいては労基署の対応の改善につながる。

いずれにせよ、現行の京都労働局の「適正給付管理対策業務要綱(一般傷病)では、心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援」は望めない。



エ) 京都労働局の対応(概要) ユニオンネットワーク・京都の追及

*「お知らせ」、事業所には送らないよう、要綱を早急に改定する。
*「お知らせ」、被災労働者向け文面については、錯誤を起こさないよう、文面の書き換えを検討する。


ユニオンネットワーク・京都の追及は多岐に渡るので、省略。申し入れ書も省略。

*「お知らせ」、いつからか?
*被災労働者向けの「お知らせ」は、わざと錯誤させるような内容になっているのではないか?労災の費用削減のために行っているのではないか?
*これまでも「お知らせ」による被害者がでているハズ。
*これまで出した「お知らせ」で、錯誤して請求していない人がいるハズ。調べれば分かるはずだ。
*改めて、これまで「お知らせ」を出した人に、案内をしなおせ。
*「お知らせ」の件数は?
*「お知らせ」、直ちにやめヨ。改定までの間、問題のある「お知らせ」を出すのは問題。
*改定したならば、改定文を知らせること。



オ) 参考サイト

情報公開推進局HOME
 業務上疾病の認定基準

被災労働者の社会復帰対策の推進について 
平成5年3月22日付 基発第172号通達
都道府県労働基準局長宛て
労働省労働基準局長



職場復帰のガイダンス(事業者・上司の方へ)
6 職場復帰手引き等の
 紹介、事例紹介、Q&A、用語解説




(京都)