中国電力男女賃金差別事件   全労協新聞 2013年9月号 3面から




中国電力男女賃金差別事件

広島高裁が女性の闘いを
反故にする時代錯誤の不当判決


結審から二カ月余り、短い判決期日の指定に高裁宛て要請はがきや要望書などが取り組まれ、女性委員会や全労協も裁判所に要請書を送付した。また男女賃金差別裁判元原告や裁判中原告たち一六事件四十人の連名で、これまでの男女差別裁判判決を踏まえ男女間賃金格差の解消の前進に資する判決を求める文書も届けた。しかし七月十八日に出された判決はあまりに手抜き、ジェンダーバイアスに満ちた不当判決だった。

十八日十三時十分法廷はすでに満員、定刻に入廷した裁判長らはうつむきつつ小声で判決を読み上げた。最初に原審判決を・・・と聞こえたので、一瞬期待したが、法廷への出入りの音でかき消され、その余の控訴人の請求を棄却するとして終了してしまった。全面敗訴との声に驚きながら報告会場の弁護士会館に向かった。

判決は、「同期の事務系男子は平成二〇年の時点で主任一級以上の職能等級になっている割合は九〇・四%に及び(女性は二五・七%)、男性は主任一級に昇格したものが三六歳で、過半数が四〇歳までに昇格している(女性は最初が四一歳)、昇格前の在級年数も女性の方が長い傾向にある、その結果同期者の平均基準賃金額は男性の平均の八八・一%、年収換算で八五・六%にとどまり、個人別の賃金額分布をみても女性のほとんどの賃金が男性よりも低額になっている」と格差の存在を認めている。

しかし、職能等級の昇格は人事考課により決まり、「職能等級制度はもとより、人事考課の基準等にも、男性従業員と女性従業員とで取扱いを異にするような定めはな」、「評価基準が作成された上これが公表され、評定者に女性を登用したり、評定者に対する研修が行われたりしており、第一次評定者による評価を更に第二次評定者が再検討し、被評定者にフィードバックされて評価の客観性を保つ仕組みがとられている」「男性間にも、昇格の早い者、遅い者、賃金額にも差があって、男女間で、層として分離していることまではうかがわれない」、さらに「女性従業員に管理職に就任することを敬遠する傾向があったり、女性の自己都合退職も少なくなく、平成十一年三月まで効力を有していた旧女性保護法の事情も伺われる」として差別はないと言い放ったのだ。
(右線は筆者)。

今頃男女別の評価ルールを公に残す企業があるわけない!一部の女性を男性の中に混ぜて女性の大半は一番後ろというのが常套手段なのだ。制度は性に中立でも実際の運用で差別しているのだ。運用の差別を問うているのにそこには何も言及せず、会社の主張のみを採用し、原告個人の考課(成績や成果は高い評価だが「責任や協力」「協調」などの評価が低い)を理由に差別を認めなかった。控訴人(一審原告)の主張や証拠、大槻鑑定意見書などは一切無視し、一九九〇年代初めからの男女賃金差別裁判が勝ちとってきた水準を何十年も後退させた、世界に恥じる判決だった。

宮地弁護士は悔しいけれど裁判は無駄ではなかったと。長迫さんは、控訴審では新たな弁護団で、賃金資料も出させ、思いをぶつけてきた、東京で闘うことになったらよろしくと気丈に思いを語った。

(女性委員会 柚木康子)



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