(声明)希代の悪法 改悪入管法の強行成立に抗議する

(声明)
希代の悪法 改悪入管法の強行成立に抗議する
 
 政府は「出入国管理および難民認定法」改正案について、一昨年廃案となった同法案の内容をほとんど変えることなく、4月13日、衆議院本会議に上程した。法案は、収容の長期化を可能な限り避けるとしつつも、日本社会に定住を求める人を一律に「送還忌避者」と決めつけ難民申請を制限し、従わなければ刑罰の対象とするもので、在留外国人の人権を著しく損なう法案である。多くの労働者市民が反対の声を上げたにも関わらず、6月9日、法案は参議院本会議で可決成立した。全労協は、議論の経過を軽んじ数の力で採決を押し通した自公、維新、国民の暴挙に断固抗議する。
  現在の日本の出入国管理行政は、極端に低い難民認定率に象徴されるように、難民申請者に対して、事実確認も疎かな稚拙且つ一方的な否認の対応をとり続けてきた。難民申請者の多くは、帰国すれば迫害を受ける恐れがあるなどの事情を抱えており、2021年3月に名古屋入管で収容中に亡くなったDV被害者であるウィシュマ・サンダマリさんもその一人だった。そして、難民申請者の親と共に日本の社会の中で生まれ、育った若者たちにとって、入管職員から「帰れ」と言われる「国籍国」は言葉もわからない、馴染みのない環境とならざるをえない。
 本来政府がやるべきことは、国際人権規約に沿って難民希望者に対する在留の門戸を開くこと、ウィシュマさんを死に追いやった収容制度を根本から見直すこと、在留資格のない人を犯罪者のごとく扱う姿勢を改めることだ。にもかかわらず、今回の「改正」法案は入管庁の一方的な都合で作られたものであり、労働力として「用済み」の外国籍の者を犯罪者呼ばわりして追い出すことを目的とし、母国に帰れない、日本を離れられない一人ひとりの事情を切り捨てる希代の悪法と言わざるを得ない。
 この間の審議で「申請者の中に難民はほとんどいない」とする柳瀬房子参与員の発言の信憑性が崩れたこと、参与員への案件の割り振りが入管庁によって極めて恣意的に行われていたこと、大阪入管の医師が酒酔い状態で診察に当たっていた事実が隠されていたことなどが次々に明らかにされ「立法事実」はことごとく崩れ去った。審議は一からやり直すべきものとなっていた。その一方で、政府案に賛成する議員からは、「送還忌避者」の多くが「犯罪者予備軍」であるかの言説が振り撒かれ、「国益なくして人権なし」などという極めて人権抑圧的な主張がされた。これらの国会での発言が戦前の特高から続く入管行政の「体質」の反映であり、外国人差別と排外主義を助長していることに強い危惧を抱く。
 労働組合にとって、今般の入管法改悪問題は、共に働く仲間が社会から排除される問題、日本で働く希望を持つ仲間の問題、共にこの社会を作る一員でありながら働く権利から排除され続けてきた仲間たちの問題であり、間違いなく私たち自らの問題である。彼ら彼女らの問題に目を背け、今だけ、自分だけ良ければという内向きの労働運動にとどまる限り、労働者の真の地位の向上、尊厳の獲得を得ることはできない。
 全労協はあらゆる差別・排外主義に反対し、日本の社会を共に支える技能実習生、留学生をはじめとする外国人労働者・移住労働者が共に社会を構成する仲間、働く仲間として明確に位置づけられる社会の実現を目指し、決して諦めることなく取り組みを進めていく。
2023年 6月13日