記憶の消去、安全無視の暴走五輪にNO! / 全労協新聞 2021年7月号

記憶の消去、安全無視の暴走五輪にNO! 全労協新聞 2021年7月号

 


#全労協 

 

お祭り騒ぎの代償は
記憶の消去、安全無視の暴走五輪にNO!


全国労働組合連絡協議会 議長 渡邉 洋


 国会は当初予定通り六月十七日に閉会となった。コロナウイルス感染対策の論議の深化が求められているにもかかわらずだ。

 「国民の命と健康を守る」と繰り返す菅政権だが、東京2020オリンピック大会の開催、それも観客を容認するという高リスクに向かって突進している。その魂胆は、お祭りの「成功」で悪政の記憶がリセットされ、支持率回復=秋の衆議院選挙勝利に結びつくというシナリオだろう。

 政治と利権のために労働者市民の命と健康、平穂な市民生活が置き去りにされている。どうせすぐ忘れるさと馬鹿にされているのだ。その手に乗ってたまるか!


大衆の力で悪法に反撃を


 改正出入国管理法案は、スリランカ人ウィシュマさんが入管施設収容中に亡くなったことを契機に入管行政への批判が高まり、多くの市民労働者の声を結集し廃案に追い込むことができた。しかし国会終盤、菅政権は戦後民主主義そして基本的人権の根幹を揺るがす重要法案を相次いで成立させた。デジタル改革推進関連法(五月十二日)、改正国民投票法(六月十一日)、重要土地利用規制法(六月十六日)などだ。

 デジタル改革椎進関連法は、行政機関や情報システム関連企業に大きな利便性をもたらす一方、個人情報保護の取り扱いが人きく変更され、基本的人権が危険に晒される。改正国民投票法では、現行法の事前運動のルールの不備が放置され、改憲派に有利とされている。重要土地利用規制法について日弁連は、「思想・良心の自由、表現の自由プライバシー権、財産権などの人権を侵害し、個人の尊厳を脅かす危険性を有するとともに、曖昧な要件の下で刑罰を科すことから罪刑法定主義に反するおそれがある」と指摘している。こうした疑問点、批判点等を残したままの法案成立だった。

 これらの問題を巡る闘いは終わったわけではない。悪法を実体化させない取り組みが求められる。


科学的リスク評価無視の政権

 

 菅首相は。五輪開催の是非を巡って、国会答弁の中で「国民の命と健康を守り安全安心な大会が実現できるように全力をばくす」と何十回も繰り返した。感染爆発でも開催するのか?ステージ3では?ステージ4では?中止と開催を分ける基準は?何を聞かれても答えは同じ。しかし、「安全安心な大会」の具体的な説明はついに一度もされなかった。全く問いにかみ合わない同じ考えを繰り返す菅首相の答弁は、「やぎさん答弁」とも言われている。

 有識者会議尾身会長は、最近になって五輪開催の危険性を強調する発言を強めてきた。これを忌々しく思った政府は、「自主的な研究」(田村厚労相)、「全く別の地平の言葉」(丸川五輪相)などと罵声を浴びせた。尾身氏の発言は、感染症専門家としてリスクの客観的な科学的分析・評価を示すものだ。科学的知見を基に、具体的な政策(五輪中止を含む)にどう反映させるかが政冶であり、「別の地平」と切り捨てることは詐されない。「安全安心」を繰り返す中で既成事実が作られ、ついには、無観客開催という「落としどころ」も葬り去られ、開会式二万人、関係者別枠、観客の飲酒容認(後に撤回)と何でもありの様相を呈してきた。こんな混沌の中で頂点を競わされる意昧はどこにあるのだろうか。


安倍・菅の悪行を決して忘れるな


 近年暴かれてきた政権の不祥事の数々。森友・加計疑惑、桜を見る会、伊藤詩織さんレイプ事件のもみ消し、恣意的にルール変更された検事総長人事、理由なき日本学術会議任命拒否、五輪組織委員会での女性差別発言、開会式の女性差別企画、与党議員の相次ぐ公選法違反。さらに思い起こせば、「コンパクト」とされた五輪予算の際限なき膨張、福島アンダーコントロールという嘘、東京の夏は温暖という嘘、復興五輪のかけ声倒れ、コロナに打ち勝った証という大嘘。これらの記憶の数々がお祭りによって消去されるのか?職場地域で、打倒自公政権の声を上げ続けよう!