ベトナム人実習生が笑顔で旅立ち / 全労協新聞 2021年7月号

ベトナム人実習生が笑顔で旅立ち 全労協新聞 2021年7月号

 


#全労協 

 

 

スクラムユニオン・ひろしま

ベトナム人実習生が
笑顔で旅立ち


 ベトナムから技能実習生として来日したカンさんは、岡山県の建設会社で、連日、暴言や暴行にさらされた。劣悪な労働環境に置かれ、半年たったある日、社長から無理やり退職届にサインさせられ、自己都合退職に追い込まれた。カンさんは、スクラムユニオンに加入し、団体交渉により和解金を勝ち収り、特定活動(就労不可)にビザを切り替えて、新しい仕事を模索した。

 彼は半年問の技能実習期間で退職に追い込まれた結果、「一号ロ」のまま仕事を失った。そのため、特定活勣ビザも就労不可という条件がついた。結果、アルバイトもできず、収入が全くないまま生活することを余儀なくされた。

実習生は生活保護を受けることができない。食べることさえ困難な状況に追い込まれていた。スクラムユニオンからの若干の食料援助や生活費のカンパによって、何とか生き延びたというのが実態である。これは単に生活困難だけではなく、人権問題である。

 カンさんは「日本で農業の仕事をしたい」という自分の意思を明確に打ち出した。そこから農業の仕事探しが始まった。仕事探しは困難を極めた。やっとのことで、香川県の団体から、「ぜひ受け入れたい」という意向が表明され、面接にも合格した。ここから特定活動就労可のビザの取得には二ヵ月間も要した。

だが、このことは画期的なことであった。日本にいる実習生たちの中には、帰国困難で、仕事もできず、生活できない状況に置かれている多くの人たちかいる。これらの人たちに希望を与える成果であ
った。

 五月二十二日、カンさんは無事、新しい職場に出発した。念願の農業に向かう彼の顔には、笑顔と自信がみなぎっていた。