ユニオンネットワーク・京都 異議申出書

ユニオンネットワーク・京都

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京都府最低賃金の改正決定に係る京都地方最低賃金審議会の答申に対する

 

異議申出書

 

 最低賃金法12条にもとづき、以下のとおり異議の申し出をおこないます。

 

■異議の内容

 

京都地方最低賃金審議会において「京都府最低賃金については、現行どおりとする」との答申が出されましたが、現行の時給909円は低すぎます。時給1500円を目指し、本年度は最低でも1000円を超える額になるよう再審議を求めます。

 

 

■異議の理由について

 

答申は、「新型コロナウィルス感染拡大による現下の経済・雇用・労働者の生活の影響、中小企業・小規模事業者がおかれている厳しい状況、今後の感染症の不透明さ、こうした中でも雇用の維持が最優先であること等を踏まえ、…現行通りとする結論に達した…」と述べています。

たしかに、厳しい状況も、今後の不透明さもご指摘の通りですが、そもそも新型コロナウィルス感染拡大による災禍への対策は国が責任を負うべきものであり、これを理由にして、「賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資する」という最低賃金の目的を犠牲にすることは許されません。

 

全国で精力的に取り組まれている労働相談の事例や、私共が受けている労働相談の経験を踏まえて言えば、最低賃金引上げの有無にかかわらず、すでに雇用は「維持されている」とはいえません。賃金労働条件の水準の高い労働者においてではなく、まさに最低賃金近傍の低賃金で働く労働者、とりわけ非正規労働者において“雇用維持はなされていない”のです。「最低賃金引上げよりも雇用の維持が優先」は全くの空論です。

 

そもそも最低賃金の引き上げと雇用維持はどのように関連しているのでしょうか。その関連を証明するものは何でしょうか。この5年間で京都の最低賃金は102円引き上げられました。その結果、町に失業者が溢れているでしょうか。失業率が上昇しているでしょうか。最低賃金の引き上げと雇用の関連はないと考えるべきです。

新型コロナウィルス感染拡大によって最低賃金引き上げに経営が耐えられない、と言うのであれば、この災禍に対する国の適切な支援ができていないということではないでしょうか。この政策の不十分性を最低賃金近傍で生活に呻吟している低賃金労働者にしわ寄せすることは全くの不正義です。社会の格差を広げ、労働者の生活を破綻においやるものです。審議会委員諸兄にはこのような不正義に加担しないよう強く求めます。

 

答申の第2段落後半には「労働者に休業させる等により雇用維持の努力をしている状況において、最低賃金引き上げが雇用調整の契機とされることは避ける必要がある。」とのべられています。

新型コロナウィルス感染拡大による長期の休業で最も被害を受けているのはまさに、最低賃金近傍の低賃金で働く労働者です。意見陳述の際にも言及しましたが、休業補償は労働基準法上、平均賃金の6割とされています。仮に時給1000円で1日8時間、月20日(160時間)働く労働者の場合、月収は160,000円ですが、1か月休業して休業補償6割を受け取った場合、月収は106,666円にしかなりません。ここから社会保険料や税金を控除したら、手取り額は7万円あまりです。家賃を払って食べていくだけでも困難な額です。決定的に深刻な問題は、低賃金労働者は日々暮らしていくのが精いっぱいで、「緊急事態」で収入が減少した時に取り崩せる蓄えもないということです。休業して雇用を維持されても、低賃金労働者は生きていけないのが現実なのです。「(最低賃金引き上げが)雇用調整の契機とされる」前に生活は破綻し、他に職を求めるか、生活保護に頼るしかない状況になっています。

 

答申の第3段落では、来年度以降の審議の方向性が述べられていますが、最低賃金近傍の低賃金で働く労働者にとって、今の苦境をどう乗り越えるのかが最重要課題であり、来年度以降の「誠実審議」を約束されても問題の解決にはなりません。現在の苦境と感染症の不透明さの中で、不安にさいなまれる社会全体に元気が出る“カンフル剤”となるべく、最低賃金の大幅引き上げによって働く者の生活の底上げをはかることこそが今なすべきことです。

ぜひ、再審議において最低賃金の大幅引き上げを実現してくださるよう強く求めます。

 

最後に、二点。一つは毎年意見提起させていただいておりますが、最低賃金の審議を全面的に公開すべきだということです。最低賃金に影響される労働者数は年々増加しています。低賃金労働者にとって、最低賃金の改定は大きな関心事になっています。実質的な審議が行なわれる専門部会を含めて公開し、またマスコミ等に積極的に情報を開示されるよう求めます。二つ目は、全国一律の最低賃金を実現すべきだということです。コンビニエンスストアや、郵便局、コールセンター、全国チェーンの店舗では、どこで働いても仕事の内容はほぼ同じです。これらの職場では明確に最低賃金を意識した賃金設定になっています。同一労働同一賃金原則からも、全国一律最低賃金を早急に実現すべきです。

                                    以上

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