全労協 引き上げを拒否した中央最賃審議会を糾弾する


最賃引き上げこそ困窮する労働者に必要!
引き上げを拒否した中央最賃審議会を糾弾する

 

2020年7月23日
全国労働組合連絡協議会

 

7月22日、中央最低賃金審議会は今年度の改定についてゼロ回答を答申し、現状維持として全国加重平均901円に据え置くことを決定、必要な地域間格差の是正についても放置しました。中央審議会は、その根拠を新型コロナウイルス感染症拡大による中小企業の経営難と日本経済の先行き不透明であり、最賃引き上げより雇用が優先するとされています。

国際的に低い日本の最低賃金に隣接して働く中小、非正規労働者は、昨年強行実施された消費税10%への引き上げ、物価上昇、実質賃金の低下によって生活は益々厳しくなっています。中央最賃審議会はこの状況に全く思いをはせることができないようです。政府が自賛し誇って見せた有効求人倍率1.6以上とは低賃金・無権利で、最賃に隣接して働かざるを得ない非正規労働者の拡大でした。そして、先進国で唯一実質賃金の低下をもたらしている現実について議論が抜け落ちています。

労働側意見を顧みることなく、使用者委員の意見を過大に受け入れ、コロナ禍によって直面している経済悪化と今後の見通しの不透明感を口実にして、「賃上げより雇用」では、日本の貧困状況は全く改善されません。

本年4月に施行されたパート・有期雇用労働法により、非正規労働者の働く環境の改善が期待されていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大により、逆に解雇や雇止め、手取り賃金の低下が急増しています。さらに、非正規雇用の拡大と労働分配率の低下、賃金引き上げから逃亡して463兆円を超える内部留保を積み上げてきた大企業の責任について中賃は言及していません。中小企業の経営難には、大企業の横暴を許すことなく政府が必要な施策を講じるべきであり、低賃金で対処することは本末転倒です。

中小・非正規労働者はコロナ禍で雇用不安と労働時間減少に直面し、生活困窮は極まっています。また、こうした労働者の多くがコロナ感染症拡大の中で市民の社会生活を支えるために感染の恐れに直面しながら働いています。医療現場の奮闘はもとより、清掃、介護、流通、スーパーマーケットの店員やデリバリー配送員など、日々のライフラインを維持する現場で働く非正規労働者こそ報われなければなりません。必要なのは「拍手」ではなく正当な対価です。

また、一貫して議論の対象となってきた地域間格差を縮小し、「どこでも誰でも」同じ処遇と賃金が保障されるため、最賃制度の役割に大きな期待が寄せられていましたが、この点に関し、しっかり議論された形跡もありません。

今後、審議は各地方の審議会に委ねられます。近年、各地方の審議会によって中賃の目安を上回る引き上げが実現しています。この事実は中賃の審議が必ずしも全国の労働者の現状に相応した議論ができていないことの証左でもあります。

全労協はこの中央最低賃金審議会決定を糾弾するとともに、地方審議会の議論に意見を集中し、困窮する労働者の生活向上に資するための闘いに全力を挙げ、審議の公開と透明な議論を求めて「どこでも誰でも1500円の最低賃金保障」実現のために闘う決意です。

以 上