全労協/ 非正規公務労働者の怒り / 新聞 2020年2月号

全労協非正規公務労働者の怒り / 新聞 2020年2月号

 


直言

激論


差別(雇用・賃金)の固定化に非正規公務労働者の怒り

 

 

今年四月から地方公務員法地方自治法の一部改正による地方自治体での会計年度任用職員制度が始まる。これによって、これまで①臨時的任用職員(根拠条項:地公法二二条)、②一般職非常勤職員(同十七条)、③特別職非常勤職員(同三条三項三号)と分類されていた地方公務員の中の非正規労働者が、新たにⒶ臨時的任用職員(同二二条の三)、Ⓑ会計年度任用職員(同二二条の二)、Ⓒ特別職非常勤職員(同三条三項三号)と再編される。大阪府の場合、二〇一七年度に①が五八・一%、②が一三・五%、③が二八・四%を占めていた(いずれも政令市を除く)。

 

この制度実現に向けて、総務省はすでに二〇一七年八月にマニュアルを作成し全国の自治体に発出している。これを受けて私の加入している労働組合も二〇一七年度中から現在に至るまで、断続的にこの問題での団交を大阪府内の三つの任命権者(大阪府大阪市堺市)と重ねてきた。しかし、あと三カ月と迫ってきたこの時期においても、この問題が公務員以外の労働組合に広がっているとは言い難い。それに何となく世間はこの制度を「非正規にもボーナスとか出て、安定するんじゃないの?」とぼんやり受け止めているようだ。

 

けれど、差別制度と闘ってきた非正規公務労働者にとって、この制度はお話にならない。この制度導入に一指も動かさない労働組合はどうかしている。ここには非正規労働者の悲哀が詰まっている。

 

そもそも、公務非正規労働者には民間労働者が持つ闘う根拠となる法律(労働組合法)が非適用だ。法の隙間にいるようなものだ。(正規公務員も含めて)労働組合法が適用されないから、労働組合がない。あるのは団体行動権も協約締結権も持たない「職員団体」だ。だから、民間非正規労働者だったら労組法に基づく団交やストをする場合でも、公務員はそれができず、救済してくれる法律は何もない。「お上」の胸先三寸で雇用や解雇が決定される。

 

しかし、前記①〜③のうち、③の特別職だけは労組法適用なので労働三権を持っている。私たちの組合はこれまでに二度、当該組合員による二四時間ストを貫徹してきた。この③の労働者の多くが今回の制度によってⒷとされ、労組法適用が外されスト権が奪われていく。

 

さらに、「ボーナス支給」が喧伝されているが、そこには「週一五時間三〇分以上勤務」というラインが設定されている。けれど、公立学校現場では③の労働者のうち上記のラインをクリアしてボーナスが支給されるのは一割程度だ。そのくせ、自治体によっては賃金が下がるところもある。その上、非正規にもこれまでなかった人事査定制度が導入される。

 

つまり、この制度は、これまで非正規労働者が必死の思いで闘ってきた差別雇用・差別賃金制度を固定化し、その差別の壁を不可視化し、そのくせ闘いの武器を取り上げてしまうものだ。今、全国の自治体は制度設計に大わらわだ。まだ間に合う。三月末ギリギリまで当該労働者を中心に据えて多くの労組が労働三権を武器に闘おう。

 

全労協常任幹事

大阪教育合同労働組合 特別執行委員 竹林 隆

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