全労協/ 第30回 全労協大会の成功に向けて / 新聞 2018年9月号

全労協第30回 全労協大会の成功に向けて / 新聞 2018年9月号

第30回 全労協大会の成功に向けて

沖縄県知事選勝利で新基地反対へ
安倍政権による自衛隊明記の九条改憲案提出策動を許さない


辺野古新基地建設反対


翁長雄志沖縄県知事が急逝された。衷心よりその死を悼む。

かつて沖縄の知事選挙は基地問題を巡って保革が激しく対立してきた。そのような歴史の中で翁長知事は、米軍普天間飛行場辺野古移設反対を旗印に、旧来の枠を超えて「オール沖縄」を誕生させた。そして辺野古移設に反対の姿勢を貫き、国の安全保障はどうあるべきかを問い続けた。

沖縄県民は、敗戦によって土地を取りあげられ、沖縄は「本土」から分離され、米国統治下で権利も自由も奪われた。

一九七二年、沖縄は「核抜き本土並み」で返還されたが、「本土」復帰後のいまも、国土面積の〇・六%の島に米軍専用施設の七〇%以上が集中する。なぜ、沖縄への基地集中が変わらないのか。そして、日本国憲法より日米地位協定が優先され、県民の人権が蹂躙され続けている。

こうした差別的構造のなかで、翁長知事の「なぜ沖縄だけがこれほどの重荷を押しつけられねばならないのか」という叫びに、安倍政権は冷淡だった。

国政選挙において移設反対派が勝利しても、その民意を顧みることなく、「辺野古移設が唯一の解決策」と繰りし基地建設工事が進められている。これは沖縄の基地負担軽減に逆行するだけではなく、東アジアの緊張緩和の流れにも逆行している。

そしていまも沖縄県民は、日本政府や米軍に対して辺野古新基地建設反対の闘いを、保守・革新を問わず全沖縄の問題として闘い続けている。

こうした中で、翁長知事が亡くなった。海面の埋め立て承認を撤回する手続きに入ることを表明した矢先のことだった。

これから沖縄は九月に知事選は行われる。これ以上の基地建設は必要なのか、知事選の結果によって沖縄は大きな岐路に立つ。翁長知事が作りあげた保守・革新の対立を乗りこえた「オール沖縄」の意思を、「本土」に生きるわれわれも引き継いでいかなければならない。


歯止めがない九条改憲


九月に自民党総裁選挙が予定されているそうである。もとよりわれわれに、その総裁選挙に参加する資格も権利もないのだが、総裁選の争点が憲法改正となると黙って見過ごすことはできない。

憲法施行から七〇年を迎えた昨年五月三日、安倍首相は、自衛隊の存在を憲法に明記する九条改憲の具体案を示した。それは、「自衛隊の存在を憲法にしっかりと位置付け」、「議論の余地なくすべく」、戦争放棄を定めた九条一項、戦力不保持や交戦権否認を定めた二項を維持した上で、「実力組織」としての自衛隊の存在を憲法に明記する案で自衛隊を事実上、戦力と認める。

安倍首相は「自衛隊に関する憲法解釈は一切変わらない」と強調しているが、であるならば九条改憲の緊急性はない。自衛隊憲法に位置付けられれば歯止めがかからず二項は死文化する。

これを受け自民党自衛隊明記などの改憲四項目について、今通常国会での成立を目指していたが、森友・加計問題などを巡る与野党の対立の中で会期末が迫り断念に追い込まれた。

だが安倍首相は、自衛隊の明記などを盛り込んだ自民党憲法改正案について、「次の国会」への改憲原案提出を目指す考えを明言している。仮に九条改憲にこだわる安倍首相が再選されればその流れが一気に加速する。

自民党は今度の総裁選挙を通じて、平和憲法の根幹である戦争放棄を定めた九条改憲の具体案を示して党内の改憲論議を加速させているが、それは同時に国民世論を喚起させるという狙いも同時に見ておく必要がある。

われわれがこれを許せば、戦後七三年の歩みとは全く別の道を歩むことになる。

(金澤壽議長)