全労協声明 労働基準法の真髄に大穴をあけた働き方「改革」法案の強行成立に抗議する!



全労協声明2018.7.2>

労働基準法の真髄に大穴をあけた働き方「改革」法案の強行成立に抗議する!

参議院厚生労働委員会は28日午前2時間の審議で採決を行おうとした。緊急に委員長解任決議が出され委員会は休憩となった。午後7時前に再会された委員会で法案は採決となり与党と補完勢力の賛成で可決され、47項目もの付帯決議が採択された。翌29日午前、政府・与党は参議院本会議を開催し、高プロ法案の廃止、時間外労働上限規制100時間の見直しを求めて過労死家族の会の方々が遺影を掲げる下で採決を強行し可決成立した。

衆議院参議院の厚労委員会での審議の中で安倍首相や加藤大臣の答弁は変遷した。高プロ法案の立法事実として大臣が答えた12名のヒアリングは一人をのぞいて法案要綱ができたあとのアリバイ作りであり、人事担当者同席で実施され、すべての労働時間規制が適用されない制度であることの説明をして聞いた内容でないことも明らかとなった。6月25日参議院予算委員会で首相は、高プロ制度のニーズは経団連の要請にあると答えざるを得なくなった。高プロ制度は残業代を払いたくない経営側の望むものであり、一括法案から削除されるべきであった。

高プロ法は、対象業務やその年収も省令によるとされ、104日の休日と4週4日の休日さえ確保すれば後は24時間連続して働かしても違法ではない、健康管理時間の把握も仕方もあいまい、高プロから離脱しても過去分の労働時間の把握もできない、政省令や指針にゆだねる項目は政府答弁でも60以上となっている等余りに杜撰なものである。政省令で決めるということは今後の改定に国会の審議は不要となる。まさに「小さく産んで大きく育てる」ことを目的としたものだ。

国会会期の延長をしたのであれば、政省令にすべてゆだねるのではなく、対象業務や懸念される長時間労働を排除する仕組みなどを審議し明確に法律に書き込むことができたはずだ。47項目に及ぶ付帯決議はまさに法の不備を示している。付帯決議に法的拘束力はない。

残りの7法案についても審議は不十分に終わっている。残業の上限規制についても過労死認定基準から一歩でも前進する議論こそが国会の役割のはずだ。労使の「ギリギリの合意」を盾に一歩も踏み出さない政府・与党の姿勢は許し難い。また目玉とされた「同一労働同一賃金」は、若干の非正規の処遇改善にはつながるものの、雇用管理の違いによる格差を容認し固定化するものとなった。1948年12月10日に国連総会で採択された世界人権宣言は23条2項で「すべての人は、いかなる差別も受けることなく、同等の勤労に対し、同等の報酬を受ける権利を有する」と定めている。それから70年も経た今日、日本の歩みは遅すぎる。このままでは長時間労働ははびこり、女性・非正規の賃金格差は残り、女性は活躍のしようもない。また、60時間を越える残業代割増率を50%とする規定についても、中小企業労働者への適用実施は更に2023年まで先送りされた。

7月に入ると政省令を検討する労働政策審議会が始まる。昨年4月7日から6月5日まで5回開催された労働条件分科会の働き方改革法案の審議では一つの議事録の公表もないままに建議とされた。許し難いことだ。今回『違法であったものを合法』とする「高プロ法案」についてはどのように政省令が決められて行くのかを私たちは注視していく。労政審委員とりわけ公益委員の果たす役割は大きく、きちんとした責任を果たすよう求めたい。

6月29日過労死家族の会の皆さんは過労死弁護団全国連絡会と記者会見を開催し、「命より大事な仕事はない」「安倍首相は遺族の話に聞く耳をもたず、向き合ってもくれないことは残念であり、悔しい。間違いなく過労死は増えます。国は責任を取るのでしょうか」と訴え、「これからも過労死の予防と救済を求めて遺族としての思いを伝えて行く」と語った。

全労協は、地方の労働組合の協力も得た実行委員会に参加し労働法制改悪阻止全国キャラバンを展開し共に闘ってきた。また、国会内で闘う野党と連携し,雇用共同アクションに参加する組合や労働弁護団、過労死家族の会の皆さんと共に闘ってきた。今後、高プロ制度が職場に拡がることのないよう職場闘争を強め、高プロ法廃止を求めて、長時間労働廃止に向けて運動を強めていく。

以上