【談話】「高度プロフェッショナル制度」を含む「働き方改革一括法案」の成立に抗議する
本日29日、安倍政権提出の「働き方改革一括法案」が可決、成立した。労働時間規制の適用を外し、過重な業務命令に労働者の命をさらす過労死促進法、「高度プロフェッショナル制度」がついに創設される事態となった。全労働団体、法曹関係者、全国過労死を考える家族の会、多数の市民の反対を無視し、労働基準法にドリルで穴をあける暴挙をおこなった政府、自民、公明、維新の各党、経団連、御用学者らに対し、全労連は満身の怒りをこめて抗議する。
「高度プロフェッショナル制度」には、労働者に働き方の裁量を与える法規定はなく、「健康確保措置」をとった上でも24時間48日連続労働や年間6000時間もの労働が合法となる。「自律的に働くことができる」という政府の説明は虚偽であり、立法根拠とされた労働者のニーズも偽装であったことが、国会審議で明らかにされた。法案導入要件である「健康管理時間」は労災認定の根拠とされず、労働基準監督官が「パソコンの記録や同僚の証言」をもって「事後」に実労働時間を再構成するしかないことや、年収要件には通勤手当等も含まれ、月例賃金は最賃に違反しない水準であればどのようにしてもよいことなども、野党の追及から明らかにされた。立法事実もなく、残業代ゼロで働かせ放題、過労死しても労災認定もされずに自己責任とされるおそれのある「高プロ」は、断じて容認できない。廃止をめざしてたたかいを継続する。
時間外労働と休日労働の上限規制についても、月末・月初に残業を集中させれば月160時間もの長時間労働を行わせうることが、国会審議で発覚した。過労死ラインをはるかに超える長時間残業は、政府の説明にも反しており、健康被害を発生させない水準まで、上限規制を引き下げるべきである。
有期・パート労働法、労働者派遣法の規定ぶりも、いわゆる「将来にわたっての人材活用の仕組みの違い」によって、正規・非正規の賃金格差を是認しており、実態は「同一労働・差別賃金容認法整備」であって、ただちに改正が必要である。「労働政策総合推進法」にいたっては、労働政策の目的に「労働生産性の向上」を位置づけ、非正規雇用に加えて、労働者保護法が適用されない「雇用されない働き方」の普及を促進して、労働者保護法制に穴をあけ、無権利な労働者をつくりだす法となっており、これも廃止すべきである。
全労連は安倍「働き方改革」に反対し、他の労働団体や市民団体と協力しながら、様々な行動を展開してきた。悪法は制定されたが、たたかいはここで終わりとはならない。政省令・指針を検討する労働政策審議会に向けた取り組み、悪法から職場を守る取り組み、悪法を廃止し本物の働き方改革を実現する取り組みを、ただちに開始する。
世界の労働者のたたかいの成果である労働法に、打撃を加えようとする安倍「働かせ方改悪」は、日本の労働者のたたかいで打破し、労働者保護法制の強化へと政策を転換させなければならない。全労連は、国際労働基準にも依拠し、この間積み上げてきた系統を超えた労働団体との共闘、過労死を考える家族の会など市民運動や法案に反対した野党との共闘も発展させて、8時間働けば暮らせる社会の実現を目指し、奮闘する決意である。
2018年6月29日
全国労働組合総連合
事務局長代行 橋 口 紀 塩