先輩労働者が伝えたストライキの解放感 / 全労協新聞 2016年9月号

先輩労働者が伝えたストライキの解放感 / 全労協新聞 2016年9月号


全労協
http://www.zenrokyo.org/

全労協新聞
http://www.zenrokyo.org/simbun/sinbun.htm
より



直言 激論


先輩労働者が伝えた
ストライキの解放感



 月一回、有志で戦前労働運動の学習会を行っている。参加者が講師を務め、戦前の労働運動・労働争議の特徴などを報告する。私は先日、「野田醤油争議」について報告した。

 「野田醤油争議」は一九二七年九月から翌年四月にかけての二二八日間の大ストライキだ。戦前の日本労働運動において最長の争議で、敵は大資本「野田醤油」(現キッコーマン)。下請運送会社の業務縮小による組合つぶしに対し、野田醤油本体の労働者も合めた一三〇〇〇人がストライキに決起した。会社の攻撃も激烈だった。争議団の大半である一〇〇〇人以上を解雇、右翼・暴力団を動員するなど、あらゆる手を使って組合・争議団を切り崩そうと試みた。しかし組合・争議団の団給は固かった。争議終結まで一〇〇〇人が団結を堅持し、その家族も含めて敢然と闘ったのだ。結局、争議は一九二八年四月、一部の被解雇者の復職、金銭の支払い等を内容とする解決協定の調印によって終結した。

 「労働争議は不幸だ」「争議をしている労働者はかわいそう」。そんな言葉が聞かれることがある。しかしそうだろうか。野田醤油争議団の集合写真を見た。笑顔の労働者もいる。表情は実に解放感があふれている。争議の経過報告には「右翼の連中を争議団本部に連行してギューギューさせて詫び状を取って追い返した」「右翼の本陣である旅館を襲撃して幹部を平身低頭させた」など、実に生き生きと、時によっては楽しげに書かれていて悲壮感は少ない。このような労働者を「悲劇の人々」としてとらえるのは失礼なのではないか、と思う。ストライキの際の解放感は私も何度も感じたことがある。それは戦前の先輩労働者も同じだったろう。先輩労備者に学び、私も闘いを続けていきたい。

(常任幹事
菅野存 全国一般東京東部労組委員長)