全労協/ 大阪府知事・大阪市長ダブル選挙 / 全労協新聞 2015年12月号

全労協/ 大阪府知事大阪市長ダブル選挙 / 全労協新聞 2015年12月号


全労協
http://www.zenrokyo.org/

全労協新聞
http://www.zenrokyo.org/simbun/sinbun.htm
より



大阪府知事大阪市長ダブル選挙

新自由主義改憲政権と
真っ向から闘う
新たな枠組みの勢力を



維新勝利の
政治的波紋


十一月二十二日に投開票があった大阪府知事大阪市長ダブル選挙は、すでに報道されているようにともに維新候補の圧勝に終わった。大阪府知事松井一郎現知事、大阪市長橋下徹現市長の後継者である吉村洋文元衆議院議員が向こう四年間担当することとなった。

実際のところ、これは大変な結果である。大阪という地方政治にとどまらず中央政界にも否定的に波及するのは必至とみられている。

まず選挙結果を見ておこう。府知事選は松井一郎が約二〇二万票、反維新(自民推薦、民主・共産の自主的応援、公明の自主投票、市長選も同じ)候補の栗原貴子が約一〇五万票、およそダブルスコアに近い。また大阪市長選は吉村洋文が六〇万票弱、反維新の柳本顕が四〇万票強、およそ一・五倍の得票である。また報道によると、維新は支持層の九割以上を固めたのに対し自民は五~六割しか固められず少なくない層が自民から維新に票が流れていたということだ。

組合攻撃に
ストライキ


二〇〇八年の橋下徹大阪府知事登場以降、大阪の労働運動はことごとく橋下・維新による弱者切り捨て、競争激化の政策と闘ってきた。「『日の丸・君が代』起立条例」「職員基本条例」「教育基本条例」などを矢継ぎ早に制定して公務員労働者の労働基本権を強権的に弾圧し、さらに、賃金・一時金の大幅カット、府立学校で働く非常勤の教務事務補助員大量解雇、私学助成カット、市民病院廃止、図書館などの公共施設の統廃合、キャンパスの位置も学部構成も学風も全く異なる大阪府大・市大の統合、市民、とくに高齢者の日常生活の足となっていた「赤バス」事業廃止、追いつめられた生活を送る子どもたちの居場所であった「子どもの家」事業廃止、文楽や音楽など文化分野での大幅補助金カットなど、枚挙にいとまがない。

これらの市民生活破壊攻撃に対し、大阪の労働運動・市民運動は全力でこれまで闘ってきた。組合事務所追い出し、思想調査、入れ墨調査処分、「君が代」不起立処分などに対しては、当該労働組合がそれぞれ裁判・労働委などに訴え、今年の高裁一件を除いて十数件、すべて勝っている。しかし、府・市ともに最高裁・中労委で組合側勝利が確定したものについてもいまだに謝罪しようとはしていない。そんな経験を蓄積してきている労働運動からすれば、今回のダブル選に維新が候補を出す資格など断じてない、というのが基本的な立場だ。だからこそ、そんな維新打倒の一点で自民候補を支援もしたのである。

また、法的闘いだけではなく、労働運動の王道であるストライキ闘争も二〇〇八年以後二度にわたって大阪教育合同労組が取り組んだ。二〇〇八年七月には府立学校非常勤教務事務補助員の大量解雇反対で大阪府に対して、二〇一二年二月には「君が代」強制反対団交拒否問題で大阪市に対して、それぞれ全日ストライキを決行している。公務労働の現場でスト権のある特別職組合員を中心に展開されたこの二度の合法ストは使用者側の介入・妨害を許さず、大阪の多くの労組の支援を得て打ち抜かれた。

そんな中で今年五月の「大阪都構想住民投票が行なわれた。「都構想」と言いつつも、実はこの住民投票にかけられたのは「大阪市の解体」の一点であった。「大阪都」の具体的構想すら打ち出せず単なるイメージ戦略的な投票で大阪市解体が決せられてはたまらないと、自民から共産まで維新以外のすべての政治勢力が「都構想反対」の一点で共闘をした。その結果、僅差ではあったが反維新の側が勝利を得た。これが、橋下の「政界引退」宣言を生んだのである。


維新の非道を
訴えつづける


しかし、今回のダブル選では、スキャンダルや政争に明け暮れ人権侵害の政治を平気で行なってきた維新が「都構想復活」を掲げ、多くの府民・市民がそれを支持したのである。このことをどうとらえたらいいのか。粗野な新自由主義と底の浅い歴史修正主義でつながり、庶民の生活感覚に鈍感で政治的に無知なこの集団が今後大阪の政治の主役にさらに四年間居座り続けることにどう相対したらいいのか。

大阪の実態に着目して言うなら、この結果になったのは、それだけ大阪の市民の生活実態がひっ迫し、そこに維新がとびつきやすいスローガンをばらまいた、ということになろう。大阪経済の低迷についていろいろと言われるが、少なくとも新自由主義政権による国家の政策そのものに理由があるということ、そしてそれの亜種である橋下・維新がこの七年間で生活破壊を率先したことにある。とくに、社会保障や教育、医療などの社会的セイフティネットをずたずたに切り裂いたのが橋下・維新である。生活保護率、平均所得などが全国最低レベルにある大阪の庶民の中で、現状打破を呼びかける橋下・維新こそそんな「現状」を生んだ勢力であることにまだ気づいていない者が多いのが残念だが。

であるなら、今回反維新で動いた勢力の今後の課題は明らかである。再度四年後に向けて、維新政治の非道をたゆまず訴えていくこと、そして、それを実現するための政治勢力・労働運動・市民運動の協力である。おそらく、今回の選挙結果を受けて中央政界での「おおさか維新」への雪崩現象と参院選での橋下政界復帰ということが現実化してくるだろう。その政治勢力はもはや自民党タカ派中心の安倍政権(およびその後継)とほとんど変わらず同一歩調をとるようになるだろう。つまり、大阪の「四年後」とは、そのような新自由主義改憲政権と真っ向から闘う新たな枠組みの「オール大阪」勢力の立ち上がりが強く求められているのである。

(竹林隆 大阪全労協事務局長)