3/30 大阪労働者弁護団 大阪府2条例の成立に抗議する声明

3/30 大阪労働者弁護団 大阪府2条例の成立に抗議する声明
 


大阪府職員基本条例及び職員基本条例施行に伴う関係条例の
整備に関する条例の成立に抗議する声明

 3月23日、大阪府議会本会議にて、標記の各条例(以下「両条例」という。)が、大阪維新の会公明党自由民主党などの賛成多数で可決成立した。

 当弁護団は、両条例案に看過しがたい重大な問題があることから、速やかに廃案とすべきことを声明を発して求めてきた。しかし今般、拙速な府議会の審議によりいずれも可決成立を見るに至ったことに対して、厳重に抗議する。
 大阪府議会による議決の拙速さにより、大阪府職員の就労条件の低下、ひいては大阪府民の生活への悪影響が生じうる事態であり、重大な懸念を拭えない。

大阪府職員基本条例は、その前文において立法趣旨を「都市間競争に勝ちぬくとともに、グローバル化少子高齢化等、時代と社会の急激な変化に迅速に対応し、活力と魅力があふれ府民が安心して暮らすことができる地域となるには、新たな地域経営モデルが必要」「自律性を備えた職員を育成する」等と述べる。
 しかし、「都市間競争」が一体何を意味するものか全く不明である上に、ここに掲げる立法趣旨と両条例の内容は、適合していない。

そもそも、職員の人事に関しては、地方公務員法によって人事委員会等の制度が設けられており、任命権者(知事)との間の権限分配等も法律によって定められている。従って、本条例は必要性を欠くばかりか、その内容によっては憲法地方自治法地方公務員法等の上位規範に違反するおそれすらある。
 さらに両条例の内容を精査すれば、「管理職を公募により任用」「職員の人事評価を相対評価とし、概ね5%を最低評価とする」「人事評価が継続して任命権者が定める基準を下回る場合であって研修その他必要な措置を実施しても勤務実績の改善がない場合には免職できる」「人事監察委員会の設置」など、その主眼は「知事に都合のよい職員のみを残していく仕組み」を作ることにあるといえる。
 このような仕組みのもとでは、身分の不安定な管理職は任命権者の意に沿った行動を強要される。そして、任命権者の意に沿わない職員は相対評価の名の下に最低評価とされ、容易に免職されることとなる。従って、職員も皆、任命権者の顔色を窺わざるを得ない。また、相対評価には、職員が相互に助け合い、互いの職務能力を高めることよりも、自己が相対的低位に評価されないかの観点を優先する機運を生むこと、さらには、職場の全員が的確な仕事をしても、誰かに最低点をつけざるを得ないことなどの矛盾と弊害がある。
 さらには、本来は人事委員会の権限である職員人事に関して、知事が自ら任命したメンバーで構成される人事監察委員会が知事の決定にお墨付きを与え、人事委員会の判断に圧力を加える仕組みとなっている。
 このように両条例は、任命権者(知事)に対する服従を強いる仕組みであり、「自律性を備えた職員を育成する」ことと相容れないばかりか、公務員が全体の奉仕者憲法第15条)であることに明らかに反している。

以上のとおり、両条例は、その必要性が認められないばかりか、上位規範に反する規定を多数含み、憲法地方自治法地方公務員法という法体系が予定している法秩序を破壊して、知事による専横を合法化しようとするものであり、大阪府職員が本来の住民サービスの職務を離れて任命権者の顔色を窺う事態を招来しかねない、断じて容認しがたいものである。
 よって、大阪労働者弁護団は両条例の可決成立に抗議するとともに、その運用に厳しい監視の目を注ぎ、早期の両条例廃止を求めていくものである。

以 上


 
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