全労協新聞 2011年9月号 1面

全労協新聞 2011年9月号
 
 
①面 復興に向け社会運動としての労働運動を
②、③面 労働組合の社会的責任として違いを越えた広大な脱原発戦線を/許されない被ばく線量の緩和、徹底した線量管理を拡大する放射能汚染、問われる地域・職場の対策
④面 ウェザーニューズの組合つぶし 委員長解雇を許さない/不採用問題終結 苦渋の決断で確認/全労協に加盟 新たな出発の一歩/放漫経営・団交拒否に抗議のストライキ
 

以下、1面から


復興に向け社会運動としての労働運動を
危機を利用した新自由主義、保守化を許すな
脱原発労働組合が全力でたたかおう
 
 第一七七回通常国会は八月末に閉会した。この間、三月に東日本を襲った大震災と東京電力福島原子力発電所の事故にみまわれ、われわれも災害に対する救援活動や脱原発の闘いを精一杯闘ってきた。その陰で今国会では何が議論されあるいはされなかったのか必ずしも明確に伝わって来ない。実際、震災の復興や原発対策が本格的に議論され始めたのが六月末からではなかったか。しかも今回の震災を契機に、根本的な防災対策の見直しやエネルギー政策、政府機関の機能と役割、経済構造など社会の根本的なあり方について議論されなければならなかったはずである。しかしわれわれの目には菅首相の辞任時期だけが最大の争点に映った。確かに浜岡原発の停止やストレステスト実施などの発言は高い支持を得ているように思うが、しかしこの発言があって「菅降ろし」が過熱したしたようにも見える。
 
 われわれは先の臨時国会で先送りされた、労働者派遣法の抜本改正、郵政民営化見直し関連法案、派遣・非正規労働者の正社員化、均等待遇の実現などをめざし、今国会での成立を期して闘ってきたが、またしても国会の混迷と政権内部のごたごたで先送りされることとなった。
 
 八月三日、労働政策審議会労働条件分科会が「有期労働契約に関する議論の中間的な整理について」を発表した。使用者側委員は「労働市場において有期労働契約の果たす雇用維持、創出等の役割を重視すべき」であり「企業の経営や雇用に与える影響を十分に踏まえ、労働契約の規制ではなく、労働市場の機能強化により対応すべき」である。「東日本大震災の影響も加わって悪化すると見込まれる経済環境や雇用環境の下、企業の存続、国内雇用の維持・創出の点でも有期労働契約による雇用の確保は重要」として規制に反対している。
 
 雇用労働者の三分の一を超える部分が非正規労働者であり、その多くが有期契約労働者となっていることが、日本の雇用社会のありように大きな影響を及ぼしている。とりわけ二〇〇八年以降の経済情勢の急激な悪化(いわゆるリーマン・ショック)の際には、有期契約労働者の雇止めや契約期間途中での解雇が増加し、雇用不安の増大、貧困と格差拡大の元凶として問題となった。
 
 世界経済はこの間の金融危機、世界大不況を乗り越えて大企業の業績は回復し収益はリーマンショック前を超えたと伝えられている。しかし雇用情勢は依然として厳しく、就職氷河期の再来といわれている。派遣、非正規労働者は一七〇〇万人を超えて増大し、年収二〇〇万円以下の労働者も一〇〇〇万人を超していると言われている。これに大震災が追い打ちをかけ、解雇と賃下げ攻撃はますます労働者を貧困と格差拡大へ押し込んでいる。
 
 政治は格差と貧困に喘ぐ働く者のためにある。そうでなければならない。
 
 菅政権とはどういう政権だったのか。二〇〇九年の民主党への歴史的な政権交代は「暮らし、雇用問題、憲法問題はどうなるのだろうか」という「生活優先の政治」に勤労国民の期待と支持を集めた結果であった。しかし総選挙での公約を転換し、日米同盟の堅持=沖縄の切り捨て、消費税十%アップなど、その期待どおりの政治を実現していない。歴史の転換期といわれ、国民の期待を背負った政権交代だったにも関わらずその意義を大きく失ったと言わざるを得ない。
 
 今回の大震災で労働者、農民・漁民は家を奪われ、倒産や事業閉鎖などで仕事が奪われ生活は破壊された。この危機を利用して政府・財界は一層の新自由主義路線とTPP路線を推進しようとしている。災害に便乗して復興需要を経済成長の手段にしようとしている。野田首相誕生による今後の政局如何では保守化・右傾化の流れが一層強まり、勤労国民に対するしわ寄せが強まることが予想される。
 
 今回の大震災の復興に向けた取り組みは社会的責任として労働運動もその役割を担わなければならないが、飽くなき利潤追求の資本とその政治を変えていくためには、社会運動としての労働運動が求められている。
 
全労協第23回大会〉
9月25日(日)開場13時 開会14時
  26日(月)12時閉会
会場 熱海ニューフジヤホテル


 
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