【原水禁声明】「ALPS処理水」の海洋放出決定に反対し、放出停止を求める
2023年08月23日
原水禁は、8月23日付で以下の声明を発表しました。
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「ALPS処理水」の海洋放出決定に反対し、放出停止を求める
8月22日、政府は「ALPS処理水」の海洋放出を8月24日から行うことを決定した。私たちは、多核種除去装置(ALPS)で62の放射性物質を処理しても、すべてが取り除けるわけではないことから、あくまでも放射能汚染水であると認識している。福島第一原発事故によって、避難生活を強いられている多くの市民が、いまだ元の生活に戻ることも叶わない現状において、さらなる負担を強いるこの決定を、原水禁は決して許すことはできない。
全国漁業協同組合連合会は毎年海洋放出反対の決議をあげてきた。2015年8月、政府・東電は、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と、福島県漁業協同組合連合会へ文書で約束をしている。この約束は、地下水ドレン・サブドレンからの海洋放出を行うことが、廃炉を進めるうえで必要とする政府・東電の主張に対し、漁業関係者が苦渋の選択として、地下水の海洋放出を認めたものである。もし、そこに汚染水が混じった場合は、海洋放出をせずタンクに保管することとあわせて、この約束を文書で取り交わした。これは重大な意味を持っている。福島県漁連は現在も、「最後の一滴まで反対し続ける」としている。
7月4日、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は、放射能汚染水の海洋放出計画について、「計画は国際的な安全基準に合致する」「人体や環境への影響は無視できる」とした報告書を、岸田首相に手交した。政府はその報告書をもって、「科学的な安全は立証できた」としている。福島第一原発事故で生じた放射能汚染水が、他の原発で生じた処理水とは異なる未知の部分があることから、政府が言うように「希釈して放出する」ことが「科学的に安全」と言い切れるだろうか。
韓国や中国をはじめ、太平洋諸国からも反対や重大な懸念が示されていることからも、国際社会における理解が得られたとは言い難い。国内でも、共同通信社が8月19・20日に実施した世論調査において、海洋放出をめぐる政府の説明が「不十分だ」は81.9%、「十分だ」は15.0%となっている。説明が尽くされているとは言い難い状況なのは明らかだ。
岸田首相は、「本格化する廃炉作業を着実に進めるためには、処理水を処分し、タンクを減らすことが必要だ」としているが、廃炉に向けて総量880トンあるとみられる溶融核燃料(デブリ)の取り出しは、今年10月以降に「耳かき1杯程度」の作業が始められる予定の段階にすぎない。今、拙速にタンクを減らすことが必要だとは到底考えられない。廃炉に向けた着実な行程を示し、その行程への信頼醸成につながる透明性の確保を図っていくことが必要だ。
仮に「安全」が立証されたとしても、必ずしも人の心に届く「安心」につながるとは言えない。原発事故を引き起こす要因となった、「安全神話」とも呼ばれる原子力推進政策について、「安心」であることを喧伝したうえで、福島第一原発事故を結果として引き起こした。その教訓から私たちが学ぶべきことは、「安心」とは事業推進側(政府・原発関連企業)が決めることではなく、限りなく公開された正しい情報を基に、そこで生活する一人ひとりの個人が判断をすることであるということだ。
放射能汚染水の海洋放出を、今後2051年まで続けることなど決して許されない。原水禁はまず、海洋放出の即時停止を強く求める。そして、廃炉に向けた着実な行程を明らかにしていくことを求める。
2023年8月23日
原水爆禁止日本国民会議
共同議長
川野 浩一
金子 哲夫
藤本 泰成