2023年度最低賃金引き上げ目安額答申に抗議する(声明)

2023年度最低賃金引き上げ目安額答申に抗議する(声明)
 
 中央最低賃金審議会は7月28日、2023年度の最低賃金(時給)を全国加重平均で現行の961円から41円、4.3%引上げ、1,002円とする目安額を答申した。今回の引上げは額、率ともで過去最高となった。しかし、全労協は示された目安額が低賃金労働者の処遇改善に資するものではなく、むしろ格差と貧困を容認、固定化するものであることを指摘し、強く抗議する。
 
 岸田首相は2023年度の最低賃金について早々に全国加重平均を1,000円に引上げると発言、いわゆる「2023年骨太の方針」でも最賃「1,000円」と掲げたことで、マスコミ各社は今年の審議会の議論の攻防ラインが1,000円であるかのように報じた。そして答申は、首相の描いた筋書き通りのものとなった。「1,000円」「過去最高」の言葉とは裏腹に、目安額はコロナ禍と物価高騰で最低賃金を大幅に引き上げた諸外国との格差を露呈させた。
 
  地域間格差を容認するランク制は今年から3ランクに変更されたが、格差を設ける基本構造は温存されている。生計費を重視した目安額とはいうものの、地域別最賃で1,000円を超えるのは8都府県のみで、39道県は1,000円に満たず、B、Cランク17県は800円台、Cランク9県で示された目安額は892円だ。
 
 地域間で生計費に2割もの格差があるという事実は存在しない。よりよい賃金を求めて労働者が県外に出て行く現実を放置すれば、地方格差と「労働力不足」倒産はますます激しさを増すだろう。
 
 目安額答申は暮らしの底上げには全く寄与せず、むしろ、社会保障制度を脅かし、この国の格差と貧困の構造、女性差別を固定化するものとなる。こうした最低賃金の動きが、全労働者の賃金改善の足かせとなっていると指摘せざるを得ない。
 
 審議会の中では、経営者側は「支払い能力」論を持ち出して対抗した。無闇に最低賃金を引き上げれば倒産が続発するという理屈だ。現実問題として中小零細企業の困難な状況はあるにしても、生活が困窮する労働者のさらなる犠牲の上での企業延命では意味はない。昨年度、33都道府県の地方最低賃金審議会は「業務改善助成金など支援策の拡充」、「税・社会保険料の減免」などの政策要望を中央審議会に答申した。政府、中央審議会は中小企業支援の具体策を講じたうえで、目安額を答申する責任があったはずである。
 
 全労協は、6月30日の第66回中央最低賃金審議会・目安小委員会以降、すべての会合に対して、他の労働団体と協力してアピール行動を行ってきた。7月15日には共闘の輪をさらに広げて新宿サウンドデモを敢行した。道行く人々に最低賃金引き上げの重要性を訴えたが、大幅引き上げを求める力はまだまだ小さい。最低賃金問題がいかにこの社会の姿を規定しているかを、もっと強く、鋭く訴え、「支払い能力」論を突破しなければならない。
 
 今回の答申を受けて、引き続き各都道府県の審議会で最終的な最低賃金額が議論され、決定されていく。昨年は22県で中央目安額を上回る地域別最賃を勝ちとってきた。地域間格差が拡大した今年は昨年以上に地域からのたたかいを強めていかなければならない。全労協はこのたたかいに全力でとりくみ、連帯していく。
 
 全労協はどこでもだれでも1,500円以上、全国一律制の実現を訴え続ける。格差と貧困が支配する社会を私たちの力で変えよう!
2023年 8月 7日  全国労働組合連絡協議会