人命軽視・生活破壊の五輪強行NO! / 全労協新聞 2021年8月号

人命軽視・生活破壊の五輪強行NO! 全労協新聞 2021年8月号

 


#全労協


人命軽視・生活破壊の
五輪強行NO!の声を
諦めることなくあげ続けよう


全国労働組合連絡協議会 議長 渡邉 洋


 Covid-19の感染を巡って、菅政権は緊急事態宣言発令と解除と再拡大で再発令を繰り返している。五輪強行開催の中で、今や感染拡大は四~五月の波を越える勢いとなっている。

 IOCバッハ会長の「途中からでも有観客に切替を」との要請に、菅政権は抗議するでもなく、人びとの命と暮らしが二の次である姿勢を鮮明にした。菅政権は、支持率回復・秋の総選拳勝利という政治目的で五輪開催に突っ走っている。

 医療の逼迫・崩壊の危機が迫っている。八月の時点での状況は流動的だが、この時期に五輪強行が社会全体に危機をもたらしていることを、最後まで訴え続けていかなければならない。


自ら招いた危機で
うごめく改憲

 

 この間、営業自粛を「強要」されてきた業界は疲弊し倒産・廃業、それに伴う解雇・シフトの削減が止まらない。飲食業界ではゴールが見えないことに業を煮やし、自粛要請に応じない店も拡大しつつある。その一方では、医療・介護関係や、医療を支援する保健行政等は繁忙を極め、労働者の疲労はピークに達している。

 「復興五輪」という欺瞞に満ちたかけ声は「コロナに人類が打ち勝った証」に変わった。コロナとの闘いが終わらない中で、スローガンは「コロナに打ち勝つため」と言い換えられた。

 安倍元首相は「反日的な人が開催に反対している」と発言し、市民社会の分断をあおったが、そもそも・JOC内にも多かった二年延期論を、自らの政治日程上の都合で一年延期にさせてきたことには一切触れない。改憲派は、パンデミックの混乱をむしろ好機と捉え、緊急事態条項を盛り込む憲法改正へと進もうとしている。


平和の祭典はどこヘ
五輪は命より大切?

 

 一向に感染の終息が見えない中で、菅政権は、IOCからふっかけられた無理難題を九呑みして「安心安全の五輪開催」を演出し、中止・延期を判断しないばかりか、有観客に固執し、観客席での飲酒を容認しようとした。丸川五輪相は、飲酒容認の背景に「ステークホルダーの存在」があることを漏らした。
萩生田文科相は、「国立競技場は有観客でも感染拡大は抑えられる」との見解を示した。

 これらの言動は、市民社会に向かって発せられた様々な自粛要請と明らかに矛盾していた。

政府の自粛要請は、個々の集客それ自体に感染拡大のエビデンスがなくとも、人流を抑制するという目的に沿って発せられたものだ。

しかし、五輪だけは予定通り開催、有観客、飲酒可といったそのどれを取っても、五輪だけは特別扱いし、五輪利権を守ろうとするもの。五輪成功を即象づけるためには市民生活を徹底的に犠牲にするという姿勢が明確に読み収れる。

世論の反発は沸騰し、会場での飲酒容認を撤回させ、多くの競技会場を無観客開催に追い込むことになった。


説明責任を
果たさない政権

 

 しかし問題は片付いていない。ワクチン接種は世界標準から見て大きく出遅れており、接種体制の拡大が急がされ一定の準備が進んだ時点で、ワクチンが不足していることが判明、突如ストップがかけられた。この事実は。五月の初めにはわかっていたのに、都議選が終わるまで隠し通された。

 西村経済再生担当相が、金融機関や酒類販売業者を使って酒類を提供し続ける飲食店に圧力をかけるように発言した。この発言が憲法に違反していることか指摘され、反発が拡大した。加えて、菅首相はじめ他の閣僚は「(西村)発言は承知していない」などと逃げ回り、結局発言と通達は撤回されたが、説明責任は一切果たされない。


差別排外主義の
跋扈を許すな!

 

 Covid-19の蔓延が続き、五輪を巡る騒動が社会全体を混乱に陥れる中で、労働者を取り巻く状況は一向に好転の兆しを見せない。仕事を奪われる者、過酷労働を強いられる者が後を絶たないのに、そこに手当てが回らない。特に医療労働者は、コロナ対策で忙殺された上に、酷暑の中の五輪への献身的な協
力を求められているが、医療崩壊の危機に直結することを問題にする声はかき消されようとしている。

 さらに、訪日する数万の外国人がウイルスを持ち込む可能性への恐怖心が、差別排外主義と結び付こうとしている。五輪そのものの是非もあるが、全労協は、パンデミック下での強行の愚策を徹底的に批判する。

 その一方で、外国人に対する差別の拡大を許さず、開会式等を巡って明らかになった女性差別障がい者差別への無頓着な対応も糾弾し闘っていく。