病棟看護師は訴える / 全労協新聞 2021年7月号
#全労協
Woman直言
新型コロナウイルス感染症のバンデミックが国境を越え、日本各地で医療が逼迫しているというのに、菅首相と小池都知事は、東京五輪・パラリンピック開催を強行しようとしています。病棟看護師の私にはオリ・バラ開催は無謀としか思えません。疲弊する医療現場の実態を知って欲しい思いでいっぱいです。
緊急事態宣言出されても、延長されても、新型コロナウイルス感染能の陽性者が減らない現状です。医療職場に働く者としては、患者さんの命とともに自分の健康と家族の安全など、常に心配しながらの仕事です。とくに、無症状者の方の入院がとても大きな問題で、入院時のスクリーニング検査で陽性がみつかることもあり対応に追われます。入院をキャンセルして、使用した部屋の隔離、消毒、そして濃厚接触者がいないかの確認作業を短時間で済まさなければなりません。
病棟内でクラスターが発生すれば、濃厚接触者となった看護師たちの代わりに病棟勤務者の再編制や病棟内のソーニング作業が迫られ、応援態勢で勤務に就くときは、接したことのない力のケアにあたる問題があります。認知症状のある方への対応は難しく、一つ一つ取り上げれば本当にきりがない状況です。
看護師として何より心を痛めるのは、隔離された病棟ではナースコールがなっても、すぐに対応できないことです。ケアしているところから手指消毒をして防護衣を脱ぎ、手指消毒をして防護衣を着るという作業を、常に繰り返しながらのケアは時間を取られてしまいます。認知症状のある方は現状を理解できずに、なぜそのような状態(防護衣を着た)で来るのか、なぜ自分の行動が制限されるのか、「起き上がりたい」、「トイレに行きたい」ただそれだけなのに、その一つ一つに消毒と着替えを繰り返しながら緊張したケアになります。
常にN95のマスクを着けているため、看護する側も息苦しく、二重の手袋やゴーグルにより声もくぐもり、患者さんと目を合わせることもフィルム越しのため、お互いに辛く苦しい時間が過ぎていきます。たとえクラスターか終息しても、心の傷と緊張はなかなか癒されませんでした。いつ発生するかわからない緊張の連続と自粛する日常生活で心が乾いていきます。
医療体制がさらに逼迫すれぱ命の選択となりえます。中等症患者でも入院できず、重症となっても専門病院に転院できないまま、軽症や中等症の病院て治療を続けることになります。政府や束京都が減らし続けた病床を慌てて増やしても、そこで行われる洽療には経験あるスタッフが必要です。
医療も看護も質と量の両方がそろわないと稼働できません。オリ・パラでは多くの大会関係者が入国し、国内でも多くの人か動きます。ワクチン頼みの現状では安心できず、何かあったら医療現場はどうなるのでしょうか。
ささやかな願いは早く安心して穏やかに過ごしたい、日常を取り戻したいとの思いです。オリ・パラはそれからではだめてすか?