コロナ禍の中だからこそ原則的な春闘を! / 全労協新聞 2021年1月号
コロナ禍の中だからこそ原則的な春闘を!
過酷労働下の医療労働者
生活基盤を奪われる
技能実習生と共に
全国労働組合連絡協議会 議長 渡邉 洋
新型コロナウイルス感染拡大は第三波に突入している。大規模倒産、解雇、雇い止めの嵐が近づいており、リーマンショックをも超える事態となることが予測される。中でも、長期の感染症対応によって疲弊する医療現場で働く労働者、生活の根拠を奪われ帰国もできない外国人技能実習生の状況は深刻だ。
コロナ禍の中で迎える2021春闘は例年とは異なる様相を呈するだろう。様々な制約に直面するだろうが、労働運動の本質を見失ってはならない。こんなときだからこそ全労協としての行動力、発信力が問われている。
◆一寸先に奈落の大不況が
コロナ不況と言われる中、今のところ統計上の倒産件数は昨年を下回っている。しかしこれは、かろうじて持続化給付金、雇用調整助成金等の政策が支えているに過ぎない。その一方で、休廃業、事業所縮小閉鎖等が進行しており、失業者数は今年に入って七万人以上増えた。給与水準は減少を示しており、二〇二〇年初頭に約一・五だった有効求人倍率は、今では一・〇ギリギリの水準にまで低下している。
政府の対策は、GoToキャンペーンのごり押しによる旅行業、飲食業等一部産業の経済活動支援に偏っており、その影響で人の移動が刺激され、感染の拡大が止まらず長期化する懸念が強まっている。このままではオリンピックどころか、国家財政が破綻し、経済全体、社会そのものが一気に崩壊するだろう。
なお、政府は十二月十四日、GoToトラベルの全国一斉での一時中止を発表した。遅きに失した判断だ。「トラベル事業が新型コロナウイルスの感染を拡大したというエピデンスはない」と発言し、専門家らの提言を退けてきた菅政権の責任は極めて重大だ。
◆賃上げ要求は労働組合の責務
経団連は十二月七日、企業業績の悪化の見通しを受けて、賃上げは困難との考えを早々に明らかにした。これに対して連合は「働きに見合った水準」を掲げ二%の賃上げを求めている。二%という水準設定の妥当性はともかく、企業業績と賃上げは別問題とする姿勢は貫いてもらいたい。
しかし、傘下労組の中にはこの要求水準を「浮世離れ」と批判するものもでてきた。これは、企業業績の範囲でしか要求はなり立たないとずるものであり、完全に経営側の論理だ。
コロナ対策に奮闘した末に経営が悪化した病院では、危険と隣り合わせの長時間過密労働の代償として、賃下げが強行されている。過重労働によるストレスから、『燃え尽き』離職も多発しており、欠員募集に手をあげる者も少なくなっている。浮世に要求を委ねていれば、医療は完金に崩壊する。
「がんばりが報われる」は、経営側が成果主義を進める際の常套句だ。しかし現実の社会は、がんばりが一向に報われない。
労働組金の目標は、残業なしで安心して生活できる賃金の実現だ。どんな状況下にあろうとも、生活実感に立脚した大幅賃上げの要求を捨ててはならない。悪条件の中で奮闘し、市民生活を支えるすぺての労働者に大幅賃上げを!
◆職も住も奪われた技能実習生
外国人技能実習生の置かれている状況はとりわけ深刻だ。その多くが、基本的な権利も剥奪され安い賃金で働かされた末に、コロナの影響で仕事を失い収入の道を閉ざされてしまうと同時に、住むところも追われ、しかも母国に帰ることもできない。生活のすべてを奪われ、これからも感染への恐怖と向かい合って過ごさなければならない。
実習生にまつわる事件報道が見られるが、彼らを取りまく極めて厳しい状況への考察抜きに現象だけか拡散されることは、憎悪感情の増幅、差別の拡大に直結しかねない。アメリカでの人種差別問題も、差別が経済格差を温存し、格差から生み出された偏見の中から新たな差別を生み出す悪循環となっている。
この国の社会・経済は、もはや外国人労働者の存在なしには成り立たない。その事実からすら目を背け、彼らを差別し排除し続ける社会を放置してはならない。こんなときだからこそ、最も弱い立場の人びとに焦点を当てた労働運動を牽引していこう!
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