全労協/ 20けんり春闘勝利! / 新聞 2020年1月号

全労協20けんり春闘勝利! / 新聞 2020年1月号

 

 

20けんり春闘勝利!
地域ぐるみの賃金闘争から
政権の腐敗・社会の病理を討つ春闘

全国労働組合連絡協議会議長 渡邉 洋

 

 例年であれば、新聞にも春闘を巡る政労使の動きが載り始める頃だが、今年は昨年にも増して少ない。「春闘の終焉」が公然と言われ、社会全体の賃金相場形成に懐疑的な目が向けられる。

 だが本当にそれで良いのか。「賃金」を給集軸に企業の枠を超えて地城で作る闘いの意味を、もう一度間い直そう。

 

内部留保拡大は
社会全体の危機

 

 春闘に関するネット記事はわずかだ。ひとつは、十月二十三日に西村経済再生担当相が経団連に「外需に不透明感があるが、賃上げの継続を」と要請したこと。もうひとつは、十一月二十五日に経団連中西会長が、二〇二〇年春闘の経営側指針として、働き手の「やりがい」を高める労働環境の整備を企業に要請する方針であること。そこに、労働組合の姿が見えない。

 

 第二次安倍政権誕生以降、官製春闘という皮肉交じりの名称が出回っている。19春闘では経営者側が春闘不要を言い出し、組合側も大手民間を中心に、ベースアップ数値目標を否定し、企業内に閉じこもろうとしてきた。賃金相場形成においての労働組合の地位、役割か変質しつつある。このままでは、本当に春闘はなくなるだろう。

 

 アベノミクスの恩恵は一部大企業に集中し、富はそれらの企業の内部留保の肥大化となっている。一方で労働分配率、実質賃金は一貫して低下し続け、労働者の生活は疲弊している。富の偏在が社会全体の構造を歪め、環境問題や戦争の脅威へとつなかってゆく。こうした事態を跳ね返すためにも賃上げは極めて重要だ。労働者が官民の枠、企業の枠を超えて賃金相場を作る営みか本来の春闘であり、春闘の存在意義は開違いなく存圧する。


花見が暴いた
政権の腐敗

 

 年末の国会は、ほぼ「桜を見る会」問題一色となった。首相が招待客を「お友だち」中心に拡大し、呼ばれた側がそれを自慢し商売に利用する。そうした首相の振る舞いに公選法違反等の大きな疑感が持たれ、政権と反社会勢力との接点、公文書保存の取り扱いなど新たな問題が次々に浮上した。政府答弁は過去の政府見解とも食い違い矛盾だらけとなり、隠蔽・改竄・捏造の横行する政治腐敗がまたしても明らかとなった。

 

 ときどき「国会はもっと重妥な問題を扱え!」という横やりか入るが、矛盾した政府答弁は放置できるわけがない。何より、政府か言い訳などせず洗いざらい資料を出せば、すぐにも終わる話なのだ。

 

 十月に改造安倍内閣がスタート後、二閣僚が公選法違反がらみで相次いで更迭され、文科相の「身の丈」発言で大学入試・英語民間試験が急遽中止に追い込まれた。これらの不祥事も、長期化した「安倍一強」のおこりと腐敗がもたらしたものだ。二〇二〇年も、安倍政権追及の手を緩めてはならない。


社会を変革する
20けんり春闘

 

 花見の陰で、いくつか重大かつ深刻な事態が進行しているのは事実だ。

 

 消費税増税が労働者・市民の生活を苦しめ、自衛隊中東派兵の検討が進められ、日本の産業を破滅に追い込む日米FTA協定が批准された。労働関係では厚労省パワハラを容認するかのような防止指針作りを進め、教員の過密労働をさらに推し進める年間変形労働時間制導入・改正給特法が成立した。そのひとつひとつが、私たちの働く環境に脅威を与え、平和と民主主義を脅かす。

 

 個別の労働現場を巡る報道も少なくない。

 

 十一月二十八日、ジャパンピジネスラボ社で起こったマタハラを巡る裁判で原告逆転敗訴。十二月に入ると、四年前に新入社員の過労自殺が起こった電通で違法残業が続いている事実が明るみに出た。続けて、楽天パワハラによる労災認定、三菱電機パワハラによる自殺か明らかとなった。ウーバーイーツ配達員の報酬が一方的に切り下げられ、ユニオンが抗議の声を上げた。いすれも、労働者の置かれている状況の厳しさを伝えている。

 

 病んだ社会を変える労働組合の役割は、ますます大きくなっている。こんなときこそ、力強い春闘が必要だ。今まで以上にけんり春闘への結集を広く呼掛けていこう。