直 言
激 論
労働者はいつまでも企業の下僕ではない
安倍政権が企業に積極的な賃上げを呼びかけてきた「官製春闘」三年目、春闘相場に大きな影響を与える大手企業の集中回答が三月十六日あった。いずれもベアは実施するものの、過去三年で最も低い回答となった。「上げろ」と政府が言い、日銀総裁が労働組合の春闘に檄を飛ばし、経団連会長は、業績が好調な企業に「昨年を上回る水準を期待」した。
厚生労働省が三月八日発表した二〇一五年の毎月勤労統計(速報)によると、実質賃金指数が前年を〇・九%下回り、四年連続でマイナスになっている。「官製春闘」で政府が賃上げを求めても、上げ幅は物価の上昇に追いつかなかった。
連合総研の昨年十月の調査で、賃金が世帯全体の収入の半分以上を占める非正規労働者のうち、二〇・九%が生活苦をしのぐために「食事の回数を減らした」と答えている。「医者にかかれなかった」「税金や社会保険料が払えなかった」も一三%あった。「トリクルダウン」は実現せず、大企業と中小企業、正社員と非正規社員との間の賃金格差がますます広がっている。
しかし大手企業各社の労働組合の要求水準額は昨年の半分、大企業と中小企業の格差是正を優先するとして、昨年、「二%以上」としていたベアの要求水準を今年は「二%程度を基準」に引き下げるなど要求段階から賃上げの幅を抑えた。
ナショナルセンター連合が、「積み上がった内部留保金を労働者に還元せよ」といっていたのにもかかわらずだ。「官製春闘」三年目「笛吹けど踊らず」これは新聞の見出し。労働組合の存在感は薄れている。「なぜ賃金は上がらないか」、要求しない、そして闘わないからである。労働者の賃金要求は生活実態を根拠とする。生活改善実現のためである。賃上げ闘争は賃労働と資本の闘いだ。これから中小の二〇一六春闘は四月以降に本格化する。労働者はいつまでも企業の下僕ではない。
(金澤壽 全労協議長)