全労協/ かんぽ生命保険の不適切営業の責任は / 新聞 2019年月9号

全労協かんぽ生命保険不適切営業の責任は / 新聞 2019年月9号

 

 


郵政産業労働者ユニオン

かんぽ生命保険
不適切営業の責任は
社員でなく経営側に

 

 かんぽ生命保険の不適切営業は、日本郵政クループの経営全体を揺さぶる大問題に発展している。乗り換え契約に伴い、保険料の二重払いや無保倹状態、新契約の拒否、告知義務違反による保険金不払いなど顧客への不利益が、二〇一四年四月~一九年三月の五年間で一八万三〇〇〇件に上ることが明らかにされ、現在、全保険契約三〇〇〇万件を見直す途方もない作業がおこなわれている。原因究明と経営責任の明確化が求められるのであって、社員への責任転嫁は許されない。

 

対応が
後手後手に

 かんぽ生命保険の不適切営業については、すでに三月十八日に西日本新聞が「全国の郵使局で二〇一五年度以降、局員の保険業法違反に当たる営業行為が六八件発覚」「内規に違反する不適正な営業も約四四〇件」「悪質な事例が目立つ」と報じたにもかかわらず、日本郵政長門社長が会見で、この問題に触れたのは六月二十四日。しかも「反省」の言葉はあったものの、謝罪の意志は示されませんでした。

 七月十日に、日本郵便の横山社長とかんぽ生命の植平社長が謝罪会見をおこないましたが長門社長の姿はなく、三十一日に改めて長門社長を含めたグループ三社の社長が謝罪するに至りました。長門社長は、「郵便局に対する信頼を大きく裏切ることになり断腸の思い」と謝罪した上で。「オール郵政で、顧客の不利益を確実に解消し、再発防止に向け改善策を講じる。各社で陣頭指揮を執るのが職貴」と発言しました。

 しかし、今回の問題では、まずもって経営側の責任であることを明確にし、職場改善や営業体制の見直しをおこなわなければならないことは明らかです。「オール郵政」といった表現で責任の所在を曖昧にする経営陣の姿勢を許すわけにはいきません。

 不適切営業が大きな問題になるまで、顧客に不利益を強いてまで営業成績にカウントされる形での乗り換え契約が繰り返されてきました。ノルマ必達が至上命題となり、営業成績が上がらなけれぱ、研修に名を借りた人格をも否定するパワハラで病気や休職、しまいには退職にまで社員が追い込まれる職場実態となっていました。

 極度のノルマ至上主義、信賞必罰の職場体制のもとで、組織的に不適切営業かおこなわれてきたことが今回の問題の本質であり、一部の悪質な社員の契約事例を持ち出して、社員個人のモラルやコンプライアンスの徹底かできていなかったというレベルの話ではありません。

 本部は、昨年の第六回定期全国大会要求交渉でも、かんぽの不適正営業がおこなわれる原因として低実績者に対する見せしめ的な研修や高すぎる営業目標などがあることを本社に指摘し改善を求めましたが、残念ながら会社の対応が改まることはありませんでした。


経営側が招いた
事業危機

 郵政ユニオンは、今回の不祥事が直接、個々の顧客に不利益を与えたという点で、過去の経営判断の誤りによる事案と異なり、「郵便局」への信頼を失墜させ、かんぽ生命のみならずクループ全体、ひいてはユニバーサルサービスをはじめとする公共サービスの維持に多大な悪影響を及ぼしかねない重大な問題であると考えています。その点で、いま郵政が、経営側が招いた本当の意味での事業危機に直面しています。

 本部は七月三十一日付で、日本郵政日本郵便・かんぽ生命の三社に対し、「かんぽ生命の不適切営業に対する申し入れ書」を提出。①事態の全容解明と原因究明、②今後のガバナンス〔日本郵政〕、社会的(経営)責任の明確化と利用者への謝罪〔日本郵使・かんぽ生命〕、③顧客の不利益是正、④経営貴任と社員への謝罪、⑤成績至上主義の払拭やノルマ体制の見直し等の職場改善、⑥不利益是正の新たな事務作業に万全を期すこと、⑦一時金の削減など労働者に責任と犠牲を転嫁しないことを求めています。

 会社が、これらの申入れ事項を真剣にとりくまなければ、失われた地域住民からの信頼は決して取り戻せません。郵政ユニオンは今後も、この問題の真の解決に向け、運動を進めていきます。

 

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