直 言
激 論
東京全労協事務局長 寺嶋 豊
職場の信頼関係を大事に闘わなければ勝利はない
全労協の機関紙に「コラム」をお願いしたいと、事務局からの要請が突然届いた。事務局が私にオファーをしたからには、何か意図があるのかと思いその真意を尋ねた。事務局から返ってきた言葉は「感じていることや、いいたいこと」などあれば何でも良いとのこと。一番難しい「お題」である。
昨年四月、天皇の退位と皇太子の即位が閣議決定された。昨年末あたりからちらほらと聞こえ始め、そして二〇一九年を迎えると「平成最後の・・・」と言われるフレーズが一段とクローズアップされて飛び交うように聞こえてくる。それはそうだろう「天皇制」「元号」を肯定するわけではないが、政治日程のように計画的に代替わりが行われるからこそのフレーズである。安倍首相は、この好機を取り逃すことのないように「新しい時代に向かって」と発言し、悲願の憲法「改正」を行おうとしている。ところで、この「平成」と言われる時代と、労働運動の再編以降の労働組合と労働者の状況はどう変わったのであろうか。
私は一九八二年、東京都水道局に入局したがその年、四・五%の人事院勧告は未実施となり、翌年も改定率が七月実施となった。時を同じくして攻撃が仕掛けられた国鉄分割民営化と国―地方の財政難、公務員攻撃など、公務労働の民営化や公務労働運動の解体に向けた攻撃が行われる。それまでの年功序列の賃金体系は、能力と業績に応じた評価制度へと向かい、労働組合に結集して集団的賃上げ闘争から個別取引による賃金決定システムへと変化した。このような中でバブルが崩壊し東京都のベースアップ額は一%弱となり、二〇〇二年からは十一年連続のマイナス勧告となり多くの若い組合員は春闘のベースアップを実感できていない。
こうした状況は賃金だけではない。一億総中流社会といわれた時代があったが、今は一部の富めるものと格差と貧困に苦しむ労働者層に落とし込められている。
会社に勤めて正社員が一般的な時代から、労働者派遣法が制定されて以降は派遣労働者と外注「業務委託」による「労働力」の提供へと、「働き方」も大きく変えられている。安倍首相が掲げる「一億総活躍社会」は、企業経営側に立った「生産性向上」の企業活動を優先させ、本来あるべき姿である労働者を守る労働法を、使用者側の「働かせ方」で縛ろうとするものです。また、不足する「労働力」を補うために新たな「在留資格」で外国人労働者の受入拡大を行い、更なる外国人労働者の「労働力」を搾取しようとしている。
経団連は、春闘は不要だと言い放った。経営者団体が決めることではない。労働者が統一の要求を掲げて資本と対決するのかを決めるのは労働者自身にあるのだから。今こそ、すべての労働者が賃金と労働条件の改善のために力を合わせる時ではないのか。メーデーが分裂して開催されるようになって三十年が過ぎた。私たちは八時間労働制を勝ち取ったメーデーの意義を確認して、今年も日比谷メーデーに結集する。
いま、闘う労働組合に対する弾圧が始まっている。労働組合は組合員全員の「相互扶助」と「競争の排除」、「集団取引」による賃金・労働条件の統一要求の三原則で、現場(職場)での相互の信頼関係を大事にして闘わなければ勝利することはできない。あらゆる攻撃と弾圧を跳ね除けて、すべての労働者が結集する統一メーデーの開催を求めて闘いを進めよう。