憲法施行70周年に訴える / 全労協新聞 2017年5月号

憲法施行70周年に訴える / 全労協新聞 2017年5月号


全労協
http://www.zenrokyo.org/

全労協新聞
http://www.zenrokyo.org/simbun/sinbun.htm
より




憲法施行70周年に訴える


安倍政権の改憲攻勢に
全ての政党、労働組合、市民の力を結集させて闘おう




今年五月三日、「基本的人権」「国民主権」「戦争放棄」を柱とした、日本国憲法施行七〇年を迎える。憲法前文で「政府の行為によって戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と宣言した。

しかし今、安倍政権はこれを否定して改憲攻勢を加速させている。憲法九条を解釈で集団的自衛権行使を容認し、二〇一五年九月、安全保障関連法の採決を強行した。さらに二〇一六年十二月、自衛隊に新たな任務を付与し、南スーダンに派遣した。

そして今安倍政権は、東京五輪パラリンピックの「テロ対策」の側面を強調して、「テロ等準備罪」いわゆる「共謀罪」を今国会の最重要法案の一つに位置づけその制定を狙っている。過去三回、批判の高まりの中で廃案になった共謀罪から、今回は「テロ等準備罪」と呼び名を変えてはいるが本質的にはなんら変わらない同一のものだ。これは、いわゆる一般人も監視される対象になり、人権の制限にもつながる法案であるが、特に労働組合の活動に正面から弾圧してくる恐れがある。

労働組合は組織的集団であるわけだから、捜査機関の監視の対象となり、計画や合意しただけで共謀したということにされ、日常的な組合活動が弾圧を受けかねない。不当解雇撤回を求める抗議集会、ストライキの計画、団体交渉等々、組織的な威力業務妨害とか組織的な信用毀損とか組織的な強要といったようなことが、組合の中で協議、確認したということで捜査の対象となる。

現在ですら、公権力が、対象となる団体の監視を強め、共謀罪の存在が無い現在でも不当な弾圧が行われている。

ひとたび共謀罪が創設されてしまえば、犯罪計画の疑いがあれば、犯罪の既遂、未遂を問わず、計画段階で捜査対象になる極めて危険な法律である。政府自民党が通そうとしている、共謀罪の持つ本質的な意味は戦前の治安維持法にも繋がっているといわなければならない。治安維持法労働組合をターゲットにしてきた。この共謀罪が新設されれば、警察の目がわれわれの生活の隅々に及んでくる。なんとしてもわれわれはこの法案を成立させてはならない。

憲法二七条および二八条は、労働の義務と権利を定めている。しかし労働関連法の改悪が続き、今や年収二〇〇万円以下の労働者は一〇〇〇万人を超え、不安定雇用労働者は、就業人口の四〇%に迫っている。また過労死を後押しする残業の上限規制月一〇〇時間を認めようとしている。こうして日本国憲法は実質的に空洞化させられてきた。

憲法一二条には「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」とされている。

自民党は二〇一二年に、現憲法と相容れない国家主義的な「自民党憲法改正草案」をつくり、その成立を目指している。そして今安倍政権は、「震災」を口実に「非常事態条項」を突破口にして改憲発議を狙っている。

われわれは、この空洞化させられてきた日本国憲法を、改憲ではなくこの憲法の全文を生活や労働、社会保障(介護、年金、医療等)等々の分野に生かしていく運動を拡げていかなければならない。そして安倍政権の憲法を無視して平和を脅かす改憲攻勢に、すべての政党、労働組合、市民の力を結集させて闘わなければならない。

(金澤壽議長)