兵庫県弁護士会 「最低賃金の引き上げに関する会長声明」

兵庫県弁護士会が7月28日付で声明を出している。
 
兵庫県弁護士会は、昨年も同様の声明を出している。
 
日弁連は、今年6月16日付で「最低賃金制度の運用に関する意見書」を出している。
 


最低賃金の引き上げに関する会長声明

1.2008年7月に施行された改正最低賃金法は、最低賃金を定めるにあたっては労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護基準との整合性を求めている(9条3項)。この法改正を受けて、最低賃金は全国平均で、2008年においては、時給703円(前年比16円増)、2009年においては、時給713円(前年比10円増)、2010年においては、時給730円(前年比17円増)と従来と比較し大幅な引き上げが継続的に行われてきた。兵庫県でも、2008年においては、時給712円(前年比15円増)、2009年においては時給721円(前年比9円増)、2010年においては時給734円(前年比13円増)と引き上げがなされてきた。

2.ところが今般、中央最低賃金審議会が示した本年度の最低賃金の引き上げ幅は全国平均でわずか6円に留まり、兵庫県を含む6道府県において、なお生活保護基準を下回っている。全国平均の時給736円で1日8時間、月22日間働いたとしても、月額給与は12万9536円、年収155万4432円にしかならない。日本の相対的貧困率は16%(2009年)と過去最悪を記録しており、その要因の一つとして非正規労働者の割合が増えたことが指摘されている。家計をパート・派遣等の非正規雇用に依存する労働者が急増し、働いても働いても人間らしい生活ができない「ワーキングプア(働く貧困)」が社会問題となっている今日、最低賃金の引き上げは緊急の課題である。
 
3.中央最低賃金審議会が示した目安に基づいて、今後各都道府県において地域別最低賃金が定められることとなっている。長引く経済不況に加え、東日本大震災により中小零細事業者の経営が一段と苦しくなると見込まれることなどから最低賃金の引き上げには消極的な論調も見受けられる。しかしながら、改正最低賃金法が定めた生活保護基準との整合性の確保は、国民の生存権保障に直結する緊急の要請である。兵庫県を含め生活保護基準との「逆転」が生じている都道府県の解消は直ちに実現されなければならないことは勿論のこと、中小零細事業者の経営支援等の施策に配慮しつつ、人間らしく生活し働くことができるよう、更なる最低賃金の引き上げへ向けた努力を求める次第である。
2011年(平成23年)7月28日
兵 庫 県 弁 護 士 会
会長 笹 野 哲 郎


 
(F)