最低賃金13-42 兵庫弁護士会 最低賃金の引き上げに関する会長声明

最低賃金13-42 兵庫弁護士会 最低賃金の引き上げに関する会長声明


1.兵庫弁護士会 最低賃金の引き上げに関する会長声明 2013年



最低賃金の引き上げに関する会長声明

厚生労働省中央最低賃金審議会は、平成25年8月7日、平成25年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安を、全国平均で時給763円(前年比14円増)とするべきことを答申した(以下、「本答申」という。)。

最低賃金制度は、国が労使間の契約自由に介入して賃金額の最低限度を規制するものであって、使用者との交渉力に欠ける未組織労働者の労働条件改善や企業間の公正競争を確保すること等をねらいとしている。

そして、最低賃金は、労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められるとされているところ、2007年(平成19年)改正によって設けられた最低賃金法9条3項は、労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するべきことを求めている。

この法改正の趣旨からすれば、最低賃金水準で働くよりも、生活保護を受給した方が収入が上回るという「逆転現象」については、本来、あってはならないものであるところ、本答申に示された程度の最低賃金引き上げ幅であると、北海道においては、なお「逆転現象」が解消しない状況が続くこととなり重大な問題である。そのほかの都府県では「逆転現象」は解消されることになるものの、たとえば兵庫県の場合は、本答申に示された程度の引き上げ幅では、時給761円で1日8時間、月22日間働いたとしても、月額給与は13万4936円、年収161万9232円にしかならず、働いても生活を賄うに足る賃金の支払を受けられない、いわゆる「ワーキング・プア」の問題の解決にはほど遠い。

国内の「ワーキング・プア」の問題に関連して、現在、協議されている労働者派遣法改正等を含む今後の経済・労働政策により、さらに、非正規労働者の割合が増加する可能性が否めない状況にある。

今後、本答申に示された目安に基づいて、兵庫県など各都道府県における地方最低賃金審議会の審議を経て地域別最低賃金が定められることとなるが、地域別最低賃金の決定にあたっては、最低賃金によって生活に最も影響を受けるのは不安定雇用に就く非正規労働者であること、及び、近時の経済状況から生活必需品の物価上昇が強く懸念されることを十分に考慮した上で、本答申に示された目安を上回る最低賃金の引き上げがなされることが強く望まれる

同時に、地方の中小零細事業者の経営状況にみれば、今後、最低賃金の引き上げのみで、「ワーキング・プア」の問題の解消を図ることについては限界がある。国において、非正規労働者社会保険料の補助など社会保障関連施策の整備を合わせた「ワーキング・プア」の問題の解消に向けた取組をすることを、強く期待したい。

3 なお、本年8月より生活保護費の支給額が減額されている。最低賃金生活保護費の「逆転現象」を生活保護費の引き下げにより解消することは、直接的に貧困を拡大することとなり、本末転倒である。

「ワーキング・プア」の問題を解消し、人間らしく生活し働くことのできる環境をととのえ、国民の生活の底上げを図るためには、生活保護費の切り下げではなく最低賃金の引き上げこそが求められていること
を付言する。

2013年(平成25年)8月21日
会 長 鈴木尉久





2.兵庫弁護士会では、2010年から毎年会長声明が出されています。



最低賃金の引き上げに関する会長声明」2010.8.6 


▲SG神戸支部の意見書、異議申出書では、日弁連の会長声明、兵庫弁護士会の会長声明に触れるようにしています。




3.日弁連


で紹介していますが、


以上のとおり、中央最低賃金審議会は、新成長戦略目標達成が実現可能な大幅引上げ、具体的には、現在の時間給749円(全国加重平均)から少なくとも30円以上の引上げを答申すべきである。

日弁連は、「少なくとも30円以上の引上げを答申すべき」としている。




(神戸)