最低賃金 兵庫弁護士会 最低賃金の大幅な引き上げを求める会長声明

最低賃金 兵庫弁護士会 最低賃金の大幅な引き上げを求める会長声明


最低賃金の大幅な引き上げを求める会長声明

2017年(平成29年)7月27日
兵庫県弁護士会 会長 白 承 豪


声明の趣旨

 当会は,兵庫地方最低賃金審議会に対し,最低賃金に関する今年度の答申にあたり,最低賃金を大幅に引き上げるよう決定することを求める。

声明の理由

1 まもなく,兵庫地方最低賃金審議会は,兵庫労働局長に対し,本年度地域別最低賃金改定に関する答申を行う予定とされている。

 昨年,最終的に,兵庫地方最低賃金審議会は,前年度比25円増額の819円とする答申を行い,同金額が兵庫県最低賃金額となった。しかし,最低賃金額である819円では,フルタイム(1日8時間,週40時間,月173時間)で働いたとしても,月収約14万1687円,年収約170万円に留まるため,賃金のみで自らの生活を維持し,将来にわたり安定した生活を確保していくことは困難である。

2 政府は,2010年(平成22年)の「新成長戦略」で2020年(平成32年)までに最低賃金を全国平均1,000円とすると謳っている。その後の2016年(平成28年)の「ニッポン一億総活躍プラン」では,将来的に最低賃金を全国平均1,000円とすることを謳っている。

 兵庫県の場合,「新成長戦略」に則り,2020年(平成32年)までに最低賃金を1,000円とするためには毎年45円の引き上げが必要であるところ,その後の「ニッポン一億総活躍プラン」では,毎年3%程度の最低賃金の引き上げとされているため,毎年24.6円程度の引き上げに留まり,時給1,000円に達するには2024年(平成36年)まで待たなければならない。

 この点,仮に時給1,000円が実現された場合にも,フルタイムで働いたとしても,月収約17万3000円,年収約207万6000円に留まるため,賃金のみで自らの生活を維持し,将来にわたり安定した生活を確保していくためには,十分な額とまでいえるものでもない。

最低賃金の水準で稼働する者の多くは,女性や若年層であり,非正規雇用が多い。賃金の格差が,若年労働者や女性の貧困を引き起こし,一旦生じた貧困が親から子どもへと連鎖し,子どもの教育格差や貧困が発生するという状況が我が国でも報告されている。最低賃金の大幅な引き上げによって,男女の賃金格差や世代間の賃金格差の解消を図り,我が国の将来を見据えた上で,働く者の間に横たわる格差から生じる貧困問題を早急に解消する必要がある。

さらには,兵庫県の2016年度(平成28年度)の最低賃金最低賃金の全国加重平均823円を下回っており,兵庫県と東京都の最低賃金(932円)との格差は113円にまで達しており,いわゆる都心部と地方の地域間格差は大きく,兵庫県からの労働者の流出の一因ともなっている。

かかる問題を解決し,最低賃金法の労働条件の改善を図り,もって,労働者の生活の安定,労働力の質的向上を図るという目的(同法第1条)を実現するためには,最低賃金の迅速かつ大幅な引き上げが必要不可欠である。

4 なお,最低賃金の引き上げに対しては,これまで中小企業の経営に影響を与えるなどの指摘がされてきたが,政府が,中小企業に対する補助金制度や減税措置等を通して中小企業の生産性を向上させ最低賃金の引き上げを可能にする環境を整備することで,中小企業の経営の影響を生じることを回避できる。

5 よって,当会は,声明の趣旨のとおり,兵庫地方最低賃金審議会に対し,今年度の最低賃金に関する答申にあたり,最低賃金額を大幅に引き上げるよう決定することを求める。



http://www.hyogoben.or.jp/topics/iken/pdf/170727iken3.pdf
「最低賃金の大幅な引き上げを求める会長声明」2017.7.27


日弁連

https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2017/170602.html
2017年06月02日    最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明