命を奪う新自由主義 / 全労協新聞 2021年5月号

命を奪う新自由主義 全労協新聞 2021年5月号 

 


#全労協 

コロナ下で働き闘う労働者・労働組合

 

Woman直言

命を奪う新自由主義
社会を変える労働運動を

 

きょうとユニオン書記長
服部恭子
 三月に厚労省が二〇二〇年の自殺者数を発表しました。データーを見ると、全体では二万一〇八一人もの人が亡くなっています。男性が一万四〇五五人(前年比二三人減)、女性が七〇二六人(同九三五人増)。

年代別では四〇代が三五六八人で最多。増加幅では十九歳以下が前年比一七・九%増の七七七人、二〇代が同一九・一%増の二五二一人。原因・動機別ではうつを含む健康問題が一万一九五人で最も多く、経済・生活問題三二一六人、家底問題九一八人、勤務問題一九一八人と続きます。職業から見ると、無職者一万一七一八人、被雇用者・勤め人六七四二人です。月ごとの推移では十月が最も多く、二二三〇人に上ります。都道府県別の自殺率をみると最低賃金の低い地域か多いことがわかります。

厚労省は「新型コロナウイルスによる生活の変化などが影響した可能性がある」との見解ですが、一言では片づけることができない問題があると思います。自死の理由や状況は一人一人異なりますし、死を選ばざるを得なかった理由をデーターからひとくくりにできる問題ではありませんが、死に至るほどの絶望の要因には孤立と貧困が大きな位置を占めていると推測されます。

 きょうとユニオンでも労働相談活動を継続している経験から、十月は契約更新が多い時期です。六ヵ月や三ヵ月の更新で働いている人の雇止めの相談が寄せられました。コロナ危機は、生活基盤の脆弱な非正規労働者に特に過酷です。貯蓄ゼロ世帯が単身者の約四割と言われていますが、失業はもちろんの事、長期の休業で十分な休業補償がされなければたちどころに生活に行き詰まります。パワハラやいじめが横行する職場の荒廃や孤立も、自己責任論や労働者間の競争を強制する仕組みの中で一層厳しいものになっています。

 新自由主義が人を殺していることかますます明らかになっていると思います。

 他方で、非正規雇用労働者の低賃金労働から利益を吸い上げている大企業はコロナ危機の中でも利益を増やし、内部留保は四五〇兆円から四七五兆円に増加しています。こんな、社会のありようを変えていくために労働運動はもっと力を発揮しなければ、と改めて思わされます。 

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