全労協/ パスポート、印鑑ひとつで感じる生きにくさ / 新聞 2018年8月号

全労協パスポート、印鑑ひとつで感じる生きにくさ / 新聞 2018年8月号

直 言
激 論

パスポート、印鑑ひとつで感じる生きにくさ


幼い頃から、女だというだけで理不尽な扱いを受け、嫌な思いをすることが多かった。

理由を聞いても、「女なら当たり前」と言われ、不機嫌や怒りを面に出せば、「怖い、怖い」「女のくせに」「言葉がキツイ」「優しく言って」などと茶化され怒鳴られた経験は枚挙にいとまなく許し難い。おかげさまで未だに私はミサンドリー(男性嫌悪)寄りである。

印鑑ひとつ作るにも、「女性だから、名字が変わることを考えて下の名前の印鑑を作った方がいい」と言われ、十年パスポートを申請すれば、「女性だから、五年にしておいたほうが絶対いい」と言われ…男性はこんな事を言われたことがあるだろうか。「結婚して好きな人の姓になるのは嬉しくないの?」こんな事を何の疑いもなく言える人間も不思議だ。

嬉しくて選んで名乗るのなら好きにすればいい話だが、女性に押し付けるような事ではないだろう。そっくりそのまま、「それなら男性が姓を変えればいい」と返すのだが、「それだと親戚や職場の人からアレコレ聞かれるし、理由を説明しなきゃならないし・・・」と続くのが大半だ。嬉しいのなら喜々として説明して歩けよと思いつつ、そもそもそういう現状がおかしいと言っているのに、夫の姓に変えない女性個人の問題にされてしまうのでなかなか話が通じない。人の選択にいちいちケチをつけるほうがおかしいのだ。「男性なのに」とアレコレ聞かれるというのであれば、「男性差別」でもあるのに気付かない。

また、職場において、結婚後も慣れ親しんだ旧姓を使いたいという人はいる。それは本人の意思を尊重するだけで済む話だ。だから、「夫の姓で呼ばれるのがそんなにイヤなの?嫌いなの?」等と言われる筋合いはない。

特に上司から言われるとやんわりと「旧姓呼び」をお願いする形になるが、にも関わらずしつこく言われたりする。そこでセクハラだと抗議すると、今度は、「女は感情的」論で済まそうとする。男女問わず、相手に感情的表現をされるまで気付かない鈍感さは批判されても仕方がないだろう。

真っ先に抗議すべき労働組合が鈍感であっては話にならないし、そういうアンテナを張っていく事は一朝一夕になるものではない。日々、意識を持っていくしかない。

こういう日常的な積み重ねこそが、労働者の信用を得る確かな方法でもある筈だ。 

全労協青年委員会 渡辺 香織