3月2日 兵庫労働局に要望書

最低賃金審議会に関連して

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兵庫地方最低賃金審議会 公益委員の選任に関しての要望書

最低賃金法の目的と法改正の意義を踏まえた視点からの選任を~

 

 

1.はじめに

 

 2021年2月18日付で、「兵庫地方最低賃金審議会委員の候補者の推薦に関する公示」(兵庫労働局一般公示第117号)が行われています。

 この公示にあわせて、公益委員等の任命に向けた手続きが進められていると思いますので、この機会に、公益委員の選任に関しての要望書を提出します。

 

 

2.日本弁護士連合会の審議会委員の多様化に関する提案について

 

 まず、日本弁護士連合会の「最低賃金制度の運用に関する意見書」(2011年(平成23年)6月16日 日本弁護士連合会)の中で、「9 審議会委員の多様化」という意見をまとめられているので、紹介したいと思います。(以下、抜粋)。

 

「9 審議会委員の多様化

 審議会の委員は,労働者を代表する委員,使用者を代表する委員,公益を代表する委員によって組織されるところ(法22条),前2者については,関係労働組合,あるいは関係使用者団体からの推薦に基づき任命されている(法施行令3条)。

 しかし,就業関係の不安定な非正規労働者が全労働者の3分の1を占めるに至っていること,2007年改正法が,生活保護に係る施策との整合性への考慮を求めている事実に照らすと,委員の選任についても,改めて議論が必要である。

 つまり,労働者を代表する委員を選任するにあたっては,例えば,実際に最低賃金の影響を受けることの多い非正規労働者を数多く組織する労働組合の代表の任命を積極的に進めるべきである。また,公益を代表する委員に関しても,労働法を専門とする学者のみならず,例えば,生活困窮者の就労支援等を行っている団体の出身者や社会保障法を専門とする学者からの選任も検討すべきである。」

 

 私たちは、この意見を支持します。

 

 

3.公益委員の選任にあたって、これまでとは異なる視点の必要性

 

 次の3つの視点からの選任をお願いしたいと思います。

 

ア)公共政策・社会政策等の視点からの選任を

 

 最低賃金制の目的は、「第一義的には、低賃金労働者の最低賃金を保障し、その労働条件の改善を図ること」にあり、第二義的には「最低賃金制度の実施の効果は社会政策、労働政策、経済政策等の各分野であるから、これらの分野において効果をあげること」とされています(「改訂3版 最低賃金法の詳解」4頁)。

 

 従って、公益委員に必要とされているのは「社会政策、労働政策、経済政策等」についての専門性ということができると思います。つまり、会社経営の専門性は、そのごく一部に過ぎないといえると思います。

 

 第53期の公益委員の選任に当たっては、最低賃金制の「目的」を踏まえ、公共政策・社会政策等の専門性を持った方を、公益委員に選任してください。

 

イ)改正最低賃金法を踏まえた選任を

 

 2007年、最低賃金法が改正され、最低賃金法第9条第3項「生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。」の一文が挿入されました(2008年7月1日施行)。

 

 日弁連の意見書の中で、「2007年改正法が,生活保護に係る施策との整合性への考慮を求めている事実に照らすと,委員の選任についても,改めて議論が必要である。」とし、「公益を代表する委員に関しても,労働法を専門とする学者のみならず,例えば,生活困窮者の就労支援等を行っている団体の出身者や社会保障法を専門とする学者からの選任も検討すべきである。」と提言しています。

 

 全く、その通りだと思います。

 

 毎年、最低賃金審議会に提出している意見書の中で、「労働局は、法改正を踏まえた資料作成を」要請しています。審議会に提出されている賃金室作成の資料は、基本的に法改正以前と変わっていません。これも、賃金室の意識が法改正前と意識と変わっていないことの表れです。同時に、審議委員もそうした法改正を意識しての資料作成の要請をしていないということでもあり、法改正の意義が、審議会に十分に反映されていないということです。事態は深刻です。

 

 第53期の公益委員の選任に当たって、法改正の意義が踏まえられるよう、社会福祉社会保障などについて詳しい方を、公益委員に選任してください。

 

ウ)ILO条約、国連・社会権規約委員会の総括所見(2013年)を踏まえられる人の選任を

 

 国連・社会権規約委員会の総括所見について、2013年から最低賃金審議会への意見書、兵庫労働局への異議申出書の中で取り上げてきました。

 

 国連・社会権規約委員会の総括所見では、ILO条約を踏まえ、最低賃金について「労働者及びその家族」という視点から考えるよう要請しています。これは、厚生労働省最低賃金を検討する際の生活保護基準(=比較対象を「12~19歳・単身世帯者」としていること)が、「単身世帯者」であることを明確に批判しています。また、「最低賃金の水準を決定する際に考慮する要素を再検討することを要求する」は、日本の最低賃金法第9条2項に規定されている「通常の事業の賃金支払能力」の削除を求めています。

 

 第53期の公益委員の選任に当たって、ILO条約と国連・社会権規約委員会の総括所見(2013年)など、国際的な視点を踏まえて議論できる方を、公益委員に選任してください。

 

以上

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