新型コロナウイルスに負けてたまるか!  / 全労協新聞 2020年4月号

新型コロナウイルスに負けてたまるか!  / 全労協新聞 2020年4月号

 


 

新型コロナウイルスに負けてたまるか!
20春闘からメーデー


全国労働組合連絡協議会
議長渡邉洋

 

新型コロナウイルスが猛威を振るっている。不安に乗じてフェイクが蔓延し、雇用破壊と民主主義破壊が進行する。病気そのものももちろん恐ろしいが、「自粛」の病魔の方がよほど危険だ。

 

春闘を巡っては、各産別、単組で大衆集会等が相次いで中止や延期に追い込まれた。それ自体は、主催者の主体的な判断に基づく限りやむを得ないが、要求そのものが後退することは許されない。生きるため、より良く生きるために声を上げることが「自粛」されてはならない。ウイルス禍を口実にしたゼロ回答の押しつけにはNO!を突きつけよう!世情に負けることなく、20春闘からメーデーへ続く闘いを牽引していこう。

 

テレワークとどう向き合うか

 

今回のウイルス禍が「働き方」に変化をもたらしそうだ。伝染を防ぐために、時差出勤とテレワークが相当程度導入されたが、流行が長引けば、そのまま定着する可能性は極めて高い。

 

こうした働き方を歓迎する声は、労働者の中にも少なくない。長距離通勤からの解放、介護や育児の都合、本人の健康上の理由、歓迎する気持ちは理解できる。しかし、そこに問題はないのだろうか。

 

テレワークを導入できない職場は、導入の「恩恵」から取り残され続けるのか。導入したらしたで、労働時間管理、労働環境整備の使用者責任が曖昧になっていく。テレワークが、裁量労働化への道を開き、その先には請負化が待ち構えている。決して検証を怠ってはならない。

 

イベント中止が仕事を奪っていく

 

政府による学校に対する突然の休校要請が、子どもたちから学ぶ権利を奪い、親には仕事を休むことを半ば強制、学校の出入り業者が操業停止に追い込まれた。

 

有給特別休暇を制度化した企業もあるが、取り残されたところもある。休業補償を求める声が上がり、最低賃金水準の補償が出ることとなった。

 

自粛要請は音楽、芸能やスポーツイベントにも及び、イベントで生計を立てるフリーランスが路頭に迷うこととなった。フリーランス団体が声を上げ、子供のために働けなくなった場合に雇用労働者の約半額の補償をすることとなった。金額は不当に低く、まったく不十分だ。そもそも、子供がいない人も仕事を奪われ収入の道を閉ざされている。見通しは立っていない。政府が繰り出した措置は、人が生きるためのものとしては、あまりにも不十分だ。それでも、働く人びとの声が結束することによって、少しずつ社会を突き動かしていく。

 

不安に乗じた差別の蔓延を止めよう

 

今回、様々なフェイクニュースが飛び交い、差別と偏見が拡大していった。トイレットペーパーが品薄という噂が瞬く間に拡散し、買い占め騒動となった。すると次は、買い占めているのは外国人という根拠のないデマが広がった。感染予防に奔走した医療関係者が、地域社会で忌み嫌われるという、本来あり得ない、あってはならない事態も起こった。障がいを持つ議員が万が一に備え国会を欠席すると、歳費を返せという見当違いの罵声が議員の中から出た。

 

最もおぞましいのは、新型肺炎の病名に、最初に感染が拡大した都市の名前をつけたがる者たちだ。かれらは、閣僚、ジャーナリスト、医師、作家などの「ハイソ」な肩書きを持つが、おそらく、それが隣国をおとしめる作用を知っている。

 

世界保健機関(WHO)は、病名に地名をつける行為が差別を助長するとして、「避けるべき」としている。現に日本に住む外国籍の人びとが、差別の拡大に直面している。ただでさえ言語の壁によって情報量を制約され、感染の不安の中で暮らしているのに、である。

 

ウイルス禍は、春闘破壊、雇用破壊、権利の制約、差別の助長という副作用をもたらした。いや、元からあるこの国の現実をあぶり出しただけと言えるかもしれない。私たちは、こうした負の現実を受け止め、闘いをつないでいかなければならない。

 

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