全労協/ 労働者の国際連帯を確かなものに / 新聞 2019年12月号

全労協労働者の国際連帯を確かなものに / 新聞 2019年12月号

 

 

労働者の国際連帯を確かなものに

安倍政権と対決し多文化共生社会の実現を!

渡邉洋 全国労働組合連絡協議会議長

 

全労協は、十一月八日から十日にかけて、代表団がソウルを訪れ、友誼労組を表敬訪問するとともに、全国労働者大会に参加した。

 

今、日本では、日韓関係について様々な議論がたたかわされている。二〇一五年十二月の慰安婦問題日韓合意以降、ことあるごとに安倍首相は、慰安婦問題は最終的かつ不可逆的に解決したと言い放ち、もう謝罪する必要はないというメッセージを繰り返し発してきた。そして、徴用工補償問題が国家間の合意を反故にしているという言説によって、市民社会の中に「嫌韓」感情が吹き込まれている。

 

こうした嫌韓感情は、日本の社会に根を張る民族差別の拡大に直結するとともに、北東アジアの国際的な緊張を煽っている。労働者労働組合が、こうした事態にどう向き合い格闘していくかが、今問われている。(関連記事三面)

 

忍び寄る甘いささやき

 

敗戦から七四年のときが経ち、戦前戦中を知る世代は次々と退場している。日本の現役労働者のほぼ全員が、日本がアジア諸国に惨禍をもたらしたあの世界大戦の実相を、そして日本による朝鮮半島の植民地支配を直接知らない。親や祖父母から聞いた話、テレビや活字から伝わる話も、断片的であり、その多くは美化されている。

 

安倍政権は、政府間合意があるからもう謝る必要はないと言う。時が経ち、戦争の記憶が薄れるごとに、こうした「甘いささやき」に一定の説得力を感じるのは事実だろう。いつまでも謝罪を求め続ける隣国に対する嫌悪感が生まれ、差別感情へと増長している。しかし、本当にこのままで良いのだろうか。「謝らなくても良い」のだろうか。

 

繰り返し台無しにされた謝罪

 

日本政府は過去何回か、侵略戦争、植民地支配、従軍慰安婦問題に触れた謝罪の言葉を発してきた。発言そのものに不十分性はあれ、謝罪発言があったことは事実だ。しかしそのたびに、有力な政治家たちがその内容を否定する発言をし、謝罪を台無しにしてきた。

 

日本の近代史に関する歴史教科書の書き換えも進められた。侵略戦争自衛戦争に、住民に対する大虐殺はなかったことにされた。そして、朝鮮半島植民地支配の歴史からは、韓国・朝鮮の人びとが味わった苦しみや屈辱が消し去られ、あたかも日本が善政を施したかのごとく、歴史が書き換えられてきた。

 

そして植民地支配の結果として日本に今なお暮らす在日韓国・朝鮮人に対する過酷な民族差別が、まさに現代日本の問題として存在していることを、私たちは決して忘れてはならない。

 

これらの事実を知らないこと、知ろうとしないことこそが問題であり、「もう謝る必要がない」と開き直ることは決して許されない。

 

共通の敵を見失うまい

 

全労協は結成以来三十年間、労働者の国際連帯に重きを置き、特に隣国韓国の労働者の闘い、とりわけ日系企業との闘いに共感し、ことある毎に共闘してきた。私たちは共通の敵である、労働者を搾取する企業や財閥、そして企業・財閥を庇護し続ける政治と闘ってきた。

 

日韓政府間の関係がどうあろうと、国を超えた労働者の連帯は、決して見失うわけにはいかない。いやむしろ、私たちの連帯こそが、北東アジアの友好に発展するもの、日本社会にはびこる民族差別に打ち勝つものと確信する。

 

日本では、移民労働者の拡大が続いており、移民労働者の人権問題が、技能実習生問題として焦点化している。彼ら彼女らを「労働力」として利用するだけでその人権を認めない安倍政権と対決し、多文化共生社会の実現を勝ち取ろう。

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