集団的自衛権行使の合憲化反対  / 全労協新聞 2014年5月号 1面から



集団的自衛権行使の合憲化反対
武器輸出拡大の「防衛装備移転三原則」反対
戦争をさせない一〇〇〇人委員会に結集し闘おう


安倍政権の集団的自衛権行使容認に向けた動きが急速に進んでいる。五月には、安倍首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告が出されるといわれているが、すでに憲法解釈変更の動きを本格化させている。

一月二十四日招集された第一八六通常国会の施政方針演説で安倍首相は、「『世界の平和と安定に貢献』『これが、積極的平和主義』『我が国初の国家安全保障戦略を貫く基本思想』『その司令塔が国家安全保障会議』」と、世界平和と安定への貢献ために「積極的平和主義」を、外交と安全保障政策の「基本思想」と位置付け、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更について「対応を検討する」と表明した。

これまでの政府解釈による集団的自衛権とは、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」であって、憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないとしてきた。

ところが安倍政権は、選挙で審判さえ受ければ憲法解釈を変えることが可能だと明言し、この政府解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認しようとしている。憲法は一般の法律とは異なり、政府の行為を制約することが本質的な役割なのであって、時の内閣が勝手に変更するようなことがあってはならないのはいうまでもない。

こうしたなか、朝日新聞憲法に関する全国世論調査によると、「集団的自衛権について『行使できない立場を維持する』が六三%、『行使できるようにする』の二三%を大きく上回った」「憲法九条を『変えない方がよい』も増えるなど、平和志向がのきなみ高まっている」とつたえている。

集団的自衛権行使容認に対して世論の大半が反対する中、自民党は「行使を必要最小限に限定して容認する」との方針を打ち出した。政府も行使を「限定的」に容認する原案をまとめたが、国民向けの世論操作ではないか。安倍政権は夏以降に憲法解釈変更の閣議決定を目指すとしているが、国民的議論も尽くさず、憲法改正の手続きも経ずして「限定」といった言葉でごまかすことは許されない。

一方で、安倍政権で「武器輸出三原則」見直し作業が本格化して以降、防衛産業でつくる経団連防衛生産委員会が自民党の国防部会に禁輸政策だった武器輸出三原則の「改善案」を提言したと報じられている。「防衛装備品について他国との共同開発に限らず、国産品の輸出を広く認めるべきだとし、国際競争に勝ち抜くため、政府内に武器輸出を専門に扱う担当部局を設けるよう」求めたと。

そして政府は四月一日閣議で、「武器輸出三原則は、わが国が平和国家としての道を歩む中で一定の役割を果たしてきたが、時代にそぐわないものとなっていた」と、武器や関連技術の海外提供を原則禁止してきた「武器輸出三原則」を全面的に見直し、輸出容認の新たな三原則「防衛装備移転三原則」に変更して決定した。今後は一定の審査を通れば輸出が可能となり、武器輸出の拡大につながる抜本的な政策転換で、憲法の平和主義の理念は、ないがしろにされる。

今こそ全世界に平和を呼びかけた憲法、そして戦争を放棄し戦力を保持しないとする九条の存在意義は増している。全労協は、「平和と民主主義」「憲法」の最大の危機と捉え、「集団的自衛権行使の合憲化反対・憲法九条を守れ」の運動を、「戦争をさせない一〇〇〇人委員会」に結集して全国各地で闘いを展開する決意である。



(F)