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今年三月十四日に起きた江田島での不幸な事件(中国人研修生がカキ養殖加工会社経営者ら二人を殺害、六人負傷させる)があったからというわけではないだろうが、立て続けに中国人技能実習生たちからの相談が寄せられている。ほとんどが残業代の未払い、いじめ、パワハラといった問題である。
今回の事件の背景に、技能実習生制度の持つ非人間的な、人権が無視された、まさに「現代の奴隷制」「人身売買」というべき制度的欠陥が横たわっていたように、多くの実習生たちは屈辱に耐え、苦しい労働に従事している。
つい先日、帰国した戈鶯歌さんもその一人であった。彼女への未払い賃金は、三年近くで三一七万円に上った。月に一六〇時間を超える残業をさせられ、年間休日は正月やお盆を含めて、十日間にも満たなかった。支払われた残業代は、一時間三〇〇円から四〇〇円である。仕事上ミスをすると罵倒され、人格を否定するような侮辱を受けた。
会社は、団交を設定したその日に工場閉鎖を行い、未払い賃金を支払うことは困難だと主張した。結局のところ、受け入れ協同組合とその傘下の事業主たちが三一七万円を立て替えて支払うことで決着した。
このような事例が頻繁に起こっているのが実情である。これらを単なる個別の事象と見るのではなく、技能実習生制度の矛盾から発生した問題ととらえ、支援体制を組んでいくつもりである。
(土屋信三
(F)