最低賃金13-16 最低賃金を時給1,200円とし、全国一律最賃制度とせよ。 (その3)




(2)厚労省生活保護基準の算定は低すぎる。以下の理由で述べる内容とせよ。

 2007年の最賃法改正では、9条3項に「生活保護にかかる施策との整合性」が挿入されました。そこで、2008年度の地域別最賃の目安の決定にあたり、生活保護基準と最低賃金の比較方法が議論となりました。翌年からは、比較方法の議論は行われていませんが、もう一度法改正の趣旨に立ち返って議論をやり直すべきです。

 平成20年7月1日に出された厚生労働省の施行通達では、9条3項の趣旨について「生活保護に係る施策との整合性は、各地方最低賃金審議会における審議にあたって考慮すべき3つの考慮要素のうち生計費にかかるものであるから、条文上は、生活保護に係る施策との整合性に配慮すると規定しているところであるが、法律上、特に生活保護に係る施策との整合性だけが明確化された点にかんがみれば、これは、最低賃金生活保護を下回らない水準となるよう配慮するという趣旨であると解される」としています。

 しかし、現在の比較方法は以下のように生活保護基準を低く、最低賃金を高く試算するものとなっており、「生活保護基準を下回らない水準となるよう配慮する」との改正法の趣旨とは異なっています。

 最低賃金額の計算に当って、労働時間を法定労働時間173.8時間として計算していますが、一般労働者の平均的な所定内実労働時間は150時間(毎月勤労統計調査)であり、この所定内実労働時間を採用するべきです。法定労働時間を採用することにより生活保護との整合性、生活保護基準を下回らない最低賃金額が低く設定されることになります。
 
 生活保護では各都道府県を複数の級地に分け、生活扶助費を決めています。しかし、中央最低賃金審議会の「目安」が採用したのは、都道府県ごとに人口加重平均をとる方法です。

 この方法では、生活費の高い県庁所在地などの生活保護費よりも低い算定がされます。このため、生活保護基準を最賃が上回っているとされている県においても、県庁所在地などでは最低賃金のほうが低くなります。生活保護については都道府県ごとの人口加重平均ではなく、県庁所在地などの最も高い級地の生活保護基準を採用すべきであり、人口加重平均を採用することによって生活保護基準を低く算定すべきではありません。
  
 生活保護費の中の住宅扶助について「目安」は、決められた特別基準額ではなく、生活保護を受給している人が実際に支払った家賃の平均である「実績値」が採用されています。

 生活保護の運用においては様々な形で基準額以内の安い物件に住むことを指導されるほか、特別に配慮された公営住宅への入居も含めて、一般的な労働者が通常、探しうる賃貸物件よりもはるかに低いものとなっています。住宅扶助の「実績値」採用によって、生活保護を低く算定すべきではありません。

 生活保護法は、稼働世帯に対して、就労に伴う経費の増加を、非稼働世帯の生活保護に上乗せする「勤労控除」という方法で実質的な均衡を図っています。もし、この額を補填しなければ、働きに出ることによって実質的な生活水準が低下してしまうからです。「目安」ではこの勤労控除が全く考慮されておらず、結果的に生活保護基準を低く算定しています。

 生活保護との比較の際、最低賃金で得られる月収から税金と社会保険料を控除して、それを各地の生活保護基準と比較していますが、その際、全国でもっとも最低賃金や公租公課の低い県の一つである沖縄の最低賃金額と公課負担率を比較した0.849という係数を全国一律で適用しています。しかし最低賃金の高い他の県では当然、公租公課の負担率は上がります。厚生労働省の計算では最低賃金額における可処分所得は、公租公課の負担率が低く設定されることにより、多くの県で実際よりも高く計算されることになります。

 「生活保護との整合性、下回らない水準」については様々な困難性がありますが、現行の算出方法は可能な限り、最低賃金を低く抑える方向で処理されていると言わざるをえません。

 また低すぎる最低賃金が、「最低賃金より高い生活保護基準」という生活保護バッシングに利用され、貧困にあえぐ生活保護受給世帯、対象者の2割から3割しか補足されていない多くの生活保護を受けず困難な生活を強いられている人々の生存を脅かしていることに強い憤りを感じます。

(3)実質的な審議が行われる小委員会をはじめ、全審議会を完全に公開せよ

 賃審議会の審議の中心は実質的な金額審議が行われる小委員会です。審議は中央最低賃金審議会運営規定第6条によれば「原則として公開」のはずであり、非公開は例外的事例です。しかし例外的事例が、審議の中心的内容すべてに適用されています。これでは審議会は原則、非公開であるとしかいいようがありません。鳥取地方最低賃金審議会では専門部会も公開し、傍聴を認めていますが何ら問題があるとは聞いておりません。

 ワーキングプアーや貧困が問題にされる中で、最低賃金引き上げは大きな社会的注目を集めています。最低賃金審議を公開し、大いに論争し、今日、要求されている最低賃金の水準、社会的に意味ある最低賃金制度とは何か、そのためには現行制度の何をあらためるべきか、などを発信していくことが求められています。審議を公開すれば、様々な意見が関係者からよせられ社会的関心も高まり、制度の改善にむけた社会的力も形成されるはずです。

 密室審議の時代は終わりつつあります。貧困が拡大し最低賃金の大幅引き上げが社会的には要求されている中で、審議の公開に耐えられないような委員は委員である資格にかけると考えます。
審議の完全公開を強く要求します。

(4)中央最低賃金審議会で、全国一般労働組合全国協議会による意見表明を求める。
 
 全国一般労働組合全国協議会は派遣、パート、アルバイトなどの有期雇用労働者や失業者、半失業者を多数、組織しています。彼らの賃金水準は極めて低く、その生活実態は極めて厳しいものです。有期雇用労働者や中小零細企業で働く労働者にとって、個別企業における賃金の引き上げは簡単ではありません。私たちは労働組合として、企業にたいして賃金引上げ要求はおこないますが、中小零細企業などでは賃上げ要求そのものが難しい場合があります。

 このような事情から私達は社会的規制としての最低賃金制度に注目し、地方最賃審議会の傍聴をおこない、意見書や異義申出書なども提出してきました。昨年、京都や、神奈川では審議会において意見表明が認められています。

 これらのことから、低賃金で働く労働者の実態を踏まえた活動をおこなっている全国一般労働組合全国協議会に、中央最賃審議会において直接意見を述べる機会を与えていただきますよう要請します。



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