原発の再稼働と輸出を許すな
憲法は、かつてない危機に
ある。
第一次安倍内閣は、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を唱え、二〇〇七年五月、国民投票の手続きについて定めた法案(日本国憲法の改正手続に関する法律)を成立させた。そして今回の政権で憲法九六条を改正した後、その他の条項についても改正の議論を進めていこうとしている。
現行憲法はもともと「日本製」ではないとし、九六条を先行させる意図と目的について、「憲法を国民の手に取り戻す。現行憲法自体、国民の手によってつくられたものではない。明治憲法は(君主が定める)欽定憲法だから、いまだかつて国民は自分たちの手で憲法をつくる経験をしていない。憲法は今、(改正発議には衆参両院の三分の二の賛成が必要という九六条によって)永田町に閉じ込められている。その憲法を、鍵を開けて取り戻す。それこそが九六条の改正だ」と。
改正には両院の総議員の三分の二以上の賛成と、国民投票での過半数の承認が必要だが、自民党などの改正論は、この「三分の二」を「過半数」に引き下げようというものだ。これは一般の法改正とほぼ同じように発議でき、憲法の根本的な性格を一変させる。
そもそも憲法とは、権力に勝手なことをさせないよう縛りをかける最高法規ではないのか。憲法九九条は、「天皇又(また)は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と。国民を縛るものではないのだ。
首相は「国民の手に憲法を取り戻す」というが、改めるべき条項があれば、国民にその必要性を十分説明し、国会で議論を尽くし、党派を超えた大多数の合意を得る必要がある。憲法を一般の法律と同列に扱うのは本末転倒だ。
東京電力福島第一原発の事故から二年以上も経つのに事故原因の本格調査が始まったばかり。それどころか貯水池から大量の放射能汚染水が漏れ出し、危機的状況にもかかわらず、東電はタンクには余裕があると発表している。
安倍晋三首相は、昨年の自民党総裁選で、「代替エネルギーを確実にし、原発依存度を減らしていく」語っていた。それにもかかわらず五月十五日の参院予算委員会で首相は、国内でも今後の再稼働について「できる限り早く実現していきたい」と表明し原発再稼働の姿勢を示している。そして首相は、事故の詳細な検証が終わってもないのに「原子力安全への貢献は日本の責務」と述べ、サウジアラビアやトルコなど中東諸国を歴訪し、トルコには原発を売った。国内の脱原発の世論の高まりで困難な国内新増設を輸出に重点を置いている。歴訪には財界のトップも同行し、「三本の矢」を掲げる安倍政権は成長戦略を「事故の教訓を世界と共有する」などと海外需要の獲得に奔走している。
(F)